イナズマ裏夢
□発情期注意報
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※南沢とは以前に一度関係を持っている
「え」
「ん?」
円堂くんに許可を貰って雷門中の部室で寛いでいると、突然現れた少年。
っていうか、最近の学校は設備が整ってるんだね。自動ドアだってさ。
「あ、南沢くーん」
「…どうして、ここに」
心底驚いたような顔をしてその場に突っ立っている南沢くん。不真面目でチャラそうなのに、部活には一番に来るんだね。
「んー、ちょっと野暮用。ちゃんと円堂く…監督には許可貰ったよ」
「…不法侵入かと思った」
ちょっと待ておい、私はそんなに信用ないのかこのやろう。そういえばこの間、拓人くんにもそんなこと言われた気がする。
あ、なんか涙出てきた。
「…酷いなぁ。私そんなに信用ない?」
「…初対面でいきなり10も年下の中学生に手ェ出してくる人が何言ってんすか」
……確かにその通りでございます、はい。
ちくしょー正論!
だってあの可愛さと色気だよ!?我慢なんて出来るわけがなかったんだ!!
「……ごめんなさい」
けれどどれだけ言い訳をしたところで、彼に手を出したことは決して疑いようのない事実。それに関しては謝るしかない。
私がしゅんと項垂れていると、南沢くんはひとつ小さなため息をついて、部室に入ってきた。
…制服も意外と似合ってる。何着ても似合う人って羨ましいな。
そんなことを考えながらじっと歩いてくる少年を見つめていると、突然何の前触れもなく、彼は鞄を置いて服を脱ぎ始めた。
「は!?ちょっ、南沢くん!?何してんの!?」
「…部室なんですから、着替えてもいいじゃないですか」
「いやいやいや、更衣室で着替えなよ!!」
なんでわざわざ私の理性を壊すような行動を起こすのかな、最近の子は!!
更衣室で着替えやがれ!!
「面倒。どうせ今日は早退しますし、荷物はここに置いときますから」
…襲われるかもしれないのに、余裕なものだ。襲うのは私だけど。
ひとつ、ふたつと制服のボタンを外していく南沢くん。いちいち色気が極めきたつ。
ガン見、まではいかないものの、ついつい視線がそちらに寄ってしまう。
制服の下に着ている赤紫っぽいTシャツ、…って校則違反じゃねえかこいつ!!
私が学生のときは、間着は白か黒じゃなければ駄目だったはずなのに。
「…んっ」
バサッ、という効果音が付きそうなほど豪快に、彼はその間着を脱ぎ捨てた。
(前に見たけど)しっかりとした腹筋と胸板、の割に細い腰、白い肌。
いちいち人の欲求を煽る身体である。
「…何見てんですか、由岐さん」
「え、ごめん。後ろ向いてようか?」
「……別に、どっちでもいいですけど」
…ちくしょう、もうちょっと恥じらうとか…そんな初々しい反応はないのか!
せっかく中三の時期なんだから!!
……もう私は中三男子を何だと思っているのだろうと自分に問いかけてみても返ってくる答えは『思春期』の三文字。
自分の脳内花畑加減が身に染みて痛い。
まあ、あながち間違いでもないはずだが。
「…由岐さん、そこの制汗スプレー取ってくれますか?」
「え?……どれ?」
…スプレーなんてどこにあるんだ。
っていうか男の子でも制汗スプレーとか使うんだな。知らなかった。
「…目の前に…ああ、もう」
え、と声を漏らす暇もなく、しゃがんでいた私は背後から抱き締められる。
甘い匂いが鼻を擽った。
そして伸びてきた白い腕が、床に落ちていた缶を拾いあげる。
それ制汗スプレーなのか、とか考える余裕は今の私にはない。
なんせ今、私の理性は崩壊寸前なのだから。
「ちょ、南沢く…」
「はぁ…しっかりしてくださいよ」
吐息混じりにそう耳元で呟かれ、ちょっと一瞬意識がトびかけた。
ヤバい、早く離れて!!
「…ちょっと南沢くん、私の理性の脆さ知ってるよね?」
「なんせ初対面の男をいきなり路地裏に連れ込むような人ですもんね」
掘り起こすなそんな記憶。
いや、ついこの間のことだけど…じゃなくて!!
「…あれは不可抗力。謝るよ。でもねこの今の体制は、襲われたって文句言えな…」
「………わざとだ、って言ったら…由岐さん、どうします?」
私の動きは、完全に停止する。
……ちくしょーこの小悪魔め。
大人をからかって楽しいかこのヤロウ。
「…誘ってんの?」
「…由岐さんがそう思うなら、そうなんじゃないですか?」
……やっぱり小悪魔だ。
どこで習ったんだ、そんな誘惑の仕方。
私の理性が、保つわけがない。
「…ここ部室だよ?」
「…でも由岐さん…我慢できないでしょう?」
「…我慢できないのは、お互い様じゃない?」
「…そうかもしれませんね」
うーん、理性がこんなにも必要性を感じない日は初めてです。