イナズマ裏夢

□自由奔放、神出鬼没
1ページ/1ページ


ガチャン、ガチャン、ぐおおバタン。いま玄関のドア開いた音しなかった?したよね?かと思えば内鍵を閉めコツンと靴を脱ぎぱたぱたと図々しくもスリッパを履きカチャリと洋室の扉を開く音。あんまりにも自然な流れでわたしのいる部屋に姿を見せるものだからわたしが間違えて他人の部屋に帰宅していたのかと思った。「風介?」なんで合鍵持ってんの?渡したままだっけ?晴矢に持っていかれたんだっけ?言いたいことは色々あるんだけど「家出した。久しぶりだな」と風介が図々しくわたしのベッドに座るものだから全部すっ飛んだ。え?なんて?久しぶりの前ちょっと聞こえなかったんだけどなんて言った?

「ごめん聞こえなかったもう一回」
「家出した。久しぶりだな」
「あ、うん久しぶり。え?いや前半もう一回」
「しつこいぞ、家出した」
「いえ…家出?待っ…」
「今晩はここに泊めてくれ」
「待って待って待って何考えてるのなんで家出したのなんで家出してここに来るのなんで合鍵持ってるの」
「色々あったんだ」

駄目だこいつ久しぶりだけど悪いところ何も変わってないぞ。昔から図々しさ突出してるけど今日の図々しさどうした?家出した時点で1回連絡をくれ。着いた時点でインターホンを鳴らしてくれ。っていうかだからなんで合鍵持ってるの!「由岐」今度はなんだ!風介の前で思わず抱えていた頭を解放し顔を上げる。次の瞬間わたしの目の前には風介のドアップ。「ぶ、」口が合わさって色気もへったくれもない声が漏れた。けれど気にした様子もなく風介はわたしの唇に自分のそれを重ね続け口の中を犯してくる。ええ?もうなんなの今日はいつもの3割増しで人の話を聞かないな。

離してくれそうにもないので、もう彼が満足するまで放っておこうと思う。拙く舌を差し込んでくるものだから吸い付くように歯でなぞってやった。「んん、」ぶるりと震えた風介の腕がわたしの背に回る。雰囲気作りたいなら最初からやり直してよ。応えるのも面倒でされるがまま適当に受け流していれば、物足りなくなったのか風介はわたしの後頭部に手をかけ奥へ奥へと舌を進ませたがる。不器用なところもほんと変わらない。理由も聞かないまま流されたりしないよ。

一方的になってしまうキスの理由にやっと気が付いたらしい風介は不満げに一度わたしを解放する。「…会いたくなったから来た。それだけだ」どうせそれも嘘に近い誤魔化しなんだろう。どうしても本心は言いたくないらしい。けれどたとえ嘘でもその理由を聞いたのだ、その見返りを求める彼に意地の悪いことをするのがわたしの目的じゃない。「…分かったよ」どうやらわたしに甘いキスを求めるのは、わたしを誤魔化す為じゃないらしいし。

彼の身体をベッドに落とし口付けを仕掛ける。今度こそ、風介はぎゅう、とわたしの首に腕を絡めて離さない。ゆっくりと吐息を交換して、彼の舌をわたしの舌先でなぞって、チョコレートを溶かすように熱を込める。驚いたのか引っ込んでしまったそれをまた唇で吸い出して、舌で挟んでまた口の中にわたしを押し込む。風介の足が絡んできた。我慢できないです、と、服の中で窮屈そうにその形を見せつけたがるそこだけは、素直にわたしにひっついてくる。可愛がってほしい、熱くさせてほしい。本人の意思かは知らないが主張を続けてくるそこに膝を押し当てれば、ああやっと気付いてくれた、と言いたげに、今度はあからさまに腰が揺らめきはじめた。ベッドが軋む。下半身に受ける刺激に集中したいのか、風介の舌の動きが鈍くなってくる。それならと、わたしも素直に引き下がり、疲れはじめた舌を休ませながら相も変わらず涼しげな首元に唇を這わせた。

少し唾液を絡ませ首の柔い皮を舐めてから、それを吸い取るように唇で吸い付く。麻酔を塗り込んでから針を刺す注射みたい。きめ細かい肌に浮かぶ赤が本当に針を刺したようで、血が流れ出るはずもないけれどそれを防ぐように思わず患部を舌で押さえる。わたしが何をしているのかなんて、愛撫の一環であると認識して最早どうでもいいのであろう風介は、ただただわたしに身を任せて、ごろんとベッドに埋まりそれでも浅ましく腰を押し付けてくる。ほんと図々しい。ひとがせっかく、お望み通り恋人同士のような甘い行為を演じているというのに。

風介の身体には少し大きなシャツの裾を首元まで捲り上げ、白い肌に指を滑らせる。彼の体温と比べればわたしの指の方が熱を持っていて、わたしが一方的に熱くなっているみたいでなんだか納得いかない。

左胸の粒をすり潰すように親指と人指し指でこね回す。風介は一瞬険しい表情を見せるけれど、すぐに瞼を閉じて熱を持つ海の色を隠した。元々そこまで感度の高くない風介は、この行為から快感を拾うのに時間がかかるらしい。しばらく掻いたり押し潰したり引っ張ったりを繰り返していると、ふいに、彼の吐息が熱くなるのだ。それを合図にわたしは少し、爪で擦ったり引っ掻いたり、施す刺激を鋭くする。「や…待て、由岐ッ」あれ。久しぶりだからタイミングを間違えてしまっただろうか。切なげに眉を寄せる風介の言う通りに刺激を削る。「だめだった?」けれど風介は、また物足りなさそうに目をそらした。なんなんだ、と再び指先の動きをとがらせると、ぐっと彼の腰が浮き上がる。足の先まで力を込めて、布団に皺を作っていく風介に、やっとわたしはその意図を汲み取ることができた。「だいぶ開発した?」つまり、この刺激方法は堪えられないほど吐精感が高まるから待ってほしい、と、そういうこと。浮いた腰の上で、わたしが乳首を捏ねるたびに跳ね上がる、服の中のいきり立ったそれを何の気なく撫でてみる。「ひッ、」途端に風介から息をのみこむような喘ぎ声が上がった。面白くてつい、張りつめたその山を手のひらで擦る。円を描いてみたり、かりかりと服越しに爪で掻いてみたり、2本の指で象るようにその形をなぞって、そのまま、先端をきゅっと絞ってみたり。ぶるりと、風介は快感に震えた。「も…もう、直接してくれ、で、出そう、だ」服の中に手を差し込む。先走りに濡れてしまった下着の上から、同じことを繰り返す。「あァ、」服の上から弄るの、好きだよね。強めの刺激も甘く拾い上げて、欲しきった肉棒がついに絶頂を訴えてきた。「あ…っも、もう、もう出る、あ、あ、ぁあっ」さん、に、いち。カウントダウンのように3回上下運動を繰り返し、下着の中に吐き出されたゼリー状の物体が布地に濾されて滲み出てきた。通り道を確保したそれは次から次に溢れ出て、濃厚な白と透明度の高い粘液とに分離して、「おい…見ていないで処理してくれ」荒い息を整えながら自らの過ちを視界に捉えたらしい風介が、苦々しくそう言った。

されるがまま、したいことをしてされたいことをさせて快感を拾うだけ。わがままお姫様モードの風介を最後まで甘やかして、新しい下着を取り出す。「…誰のだ、それは」え、分かんない。でも一回洗濯してるから大丈夫大丈夫。「…いらない。持ってきた」ああそう?それじゃあと乱雑に放り投げられたままのエナメルバッグを開ける。「なにこれ」見たことないユニフォームだ。日本代表の赤バージョン。反逆者でもやるの?「ああ…明日からアジア予選に向けて練習だ」アジア予選?そのときガチャリと、風介がさっき閉めたはずの玄関の鍵が勢いよく開く音。ドン。ドアが開かない音。そういえば風介、わたしが上下両方の鍵を閉めるなんてよく知ってたな。ドアの外で下側の鍵に引っかかったらしい誰かが開かないドアに2回体当たりをしていた。壊れるからやめて。

それから暫く音がやんで、やっと鍵がもうひとつあることに気が付いたのかまたガチャリと音がする。ドン。開かない音がした。ああ、元々開いてたものだと思って上の鍵を閉め直したらしい。「あれは晴矢だな」うん、だろうね。前に強請られて鍵を渡していたのだけれど、って、じゃあなんで風介はうちの鍵持ってるの?「っ開いた!!おいいるんだろ風介!!」開いたらしい。聞こえる声は案の定晴矢の苛ついたそれだ。どすどすとあからさまに足音をたてて向かってきた晴矢は最後の扉を勢いよく開けた。あ、やば、「いた!!おま、…えっ!!?」後処理中だったの忘れてた。ぎょっと怯んだ晴矢がさっき開けたドアに背を預けると、ちゃんと閉まりきっていなかったそれがゆっくりと、晴矢を巻き込んで廊下に出て行った。あーあ。

「何しにきたの晴矢」
「おまっ、恥ず、いや風、ああああくそっ!!」
「近所迷惑だから声抑えてよ晴矢、ちょっと風介寝ないで。で、晴矢は何しにきたの?」
「……ああ?風介と同じだろ…」
「……わたしに会いに来たの?」
「っはあ!!?ちがっ、お前の家がFFスタジアムから近いから暫く泊まりに来たんだよ!!」
「はい?泊まりに?いやそれ事前に連絡…っていうかFFスタジアムに近いからってどういうこと?」
「何も言ってねえのかよ…!俺と風介は韓国代表でFFIアジア予選に出るんだよ!」
「風介ちょっと起きて話聞かせてくれる?」
「チッ…面倒だから嫌だったんだ」
「寝るな」

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ