イナズマ裏夢

□相違、相似、似た者同士。
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「泊めてくれ」

あまりに予想の範疇を超える顔に、ついその頬を抓りそうになった。「えっ…泊め?待っ…泊める?鬼道くんを?んえ、待って待って?なん…えっ?」すごい、問いかけが多すぎて舌が追いつかない。何の連絡も寄越さず突然やって来たと思ったら泊めてくれ?え?今日?今から?その軽装で来て?もう日用品買うようなお店は多分閉まってるけど大丈夫?えっ?きみは本当に鬼道くん?「明日この付近に用事があるんだが、運転手の都合がつかなくてな。今日のうちに移動をしておこうというわけだ」え?ホテルは?えっ、あうえ?あっもうわたしの意見は聞いてはくれない?あっ、そ、そう?

この付近ってどの付近を言うのかは分からないけれど、確かに鬼道くんの家からここまでは電車を乗り継いでも遠い。え?うん、ホテルは?「悪いな、軽食を貰えるか」え?あ、う、うん、えっ今日の晩御飯の残り物しかないけどいい?なんで食べて来てないの?車で食べられ…いやまあ、いいんだけど、今すごい図々しいこと言ってるよ鬼道くん気付いてる?

「えっ…なに…たべる…?えっと…今日…晩御飯…なんだっけ」
「鍵は2つとも閉めるのか」
「あっ、うん、閉める…いや、ごめんね今ちょっと混乱してるからこれ以上回答を要する質問しないでもらっていい…?」
「和食はあるか」
「え、あ、うん、あります…多分…あの鬼道くん聞いてるかな?わたしいま混乱しててね」
「なんだ?経緯はもう話しただろう」
「あ…うん、そうだね…でもあの…まったく理解してないというか…ひとつずつ聞いていいかな?ご飯食べながらでいいから…あの…え?ホテルとらないの?」
「迷惑か?」
「え?め、迷惑じゃないけど…だから混乱してるんだって…え?どうしてホテルとらなかったの?」
「久しぶりに、お前と話をしたくなった」

うそでしょ、ずきゅん。「なんてな」え?聞こえないよ今更そんなの。コートを脱ぎ我が家のように寝室のクローゼットからハンガーを取り出す鬼道くんを衝動のまま後ろから抱き竦める。わたしの部屋で鬼道くんの匂いがするなんて不思議な感じ。「…ああ、風呂も貸してくれ」うんいいよなんでも使ってよ、でも早々にわたしの匂いに染まるなんてそんな勿体無いことさせない。「その前に、堪能させて」薄灰のコートが彼の手を離れて揺れる。身体に回した腕に力を込めれば、鬼道くんは小さく息を吐いた。ええ、誘ったのそっちだよ。

「鬼道くんがわたしに甘いなんて」天変地異だった。それは突然泊まりにやって来た負い目なの?それともそっちが本心で、だから泊まりに来てくれたの?どちらも違って、本当はわたしを誤魔化すための言い訳でしかないのかもしれない。けれど、もう、なんでもいいや。「お、い…っ性急すぎるぞ」なにそれ、ゆっくりなら良いってこと?いまなに言われても可愛く聞こえちゃうからもっと言ってよ。

左手でシャツのボタンを外しながら、手持ち無沙汰な右手をその裾から侵入させる。足の付け根をなぞって、下着の紐を弄ぶ。あ、ボタンぜんぶ外れた。一度身体を離しどちらともなく向き合って、鬼道くんの背を壁に預けさせる。肢体をひっつけるように寄せて肌をなぞれば、わたしの手のひらの向こうのそれは、少し身動いだ。わたしの息ばかり荒くなっているみたいじゃないか、鬼道くんも堪えないでよ。

ジーンズだし、足を押し付けてしまうと痛いかな。脱がせていいよね。それを落とすついでに太ももに手を滑らせ、下着の中で内腿を撫でる。ああそういえばキスもしていないぞ。我ながら性急すぎだな、ムードなんてあったものじゃない。少し熱っぽくなった彼の息をたどるように、口付けを交わ、「むっ」ゴーグルが邪魔してくる。むうん、どうしようかな。わたしに見えづらいからと高を括って、わたしをじっと見つめてくるゴーグルの奥の瞳、好きなんだけど。まあ、同じくらい、レンズを介さない紅い瞳も好きだからいっか。

ゴーグルを額まで持ち上げ、それでも邪魔だなと思ってポニーテールの後ろを通す。「んむ」ついでにお預けだったキスを軽く繰り返して、その輪っかがわたしの腕に落ちる頃には、口付けは深くなり艶かしい水音が籠っていた。

唾液が絡む音が好きだ。無遠慮に掻き回せば、品のないそれがより響く。品なんて気にしていられないほど、それに溺れる色っぽい視線が、好きだ。「はっ…」そんなわたしに流されてくれないらしい鬼道くんは、ふいっと顔を背けて口元を拭ってしまった。むうん。もっと欲に堕ちてほしいなあ。

「鬼道くん後ろ向いて」
「…は?何故だ」
「後ろ向いてー、腰突き出して」
「……断る。嫌な予感がする」
「ええ!?む、むう、じゃあ…ううん…前から………痛かったらごめんね」
「は…?何をする気だ、やめろ」
「やだ、もっと乱れてほしい」
「……やめろ、おいなんだそれやめろ」
「大丈夫大丈夫、吹雪くん気持ちよかったって言ってたし」
「待っ…待て」
「暴れると痛いよ」

後ろのクローゼットにあるアダルトグッズボックスから細めの未開封カテーテルと潤滑剤を取り出し、鬼道くんの前にしゃがみ込んで下着から半勃ちのそれを解放する。「おい……まさかそれ」まあそうだよね、こんな細い棒状のものは2種類しか使い方がないよね。縛るか、入れるか。どっちも嫌だろうけどより嫌な方を想像してしまったらしく、鬼道くんの頬が引きつった。うん、正解。

潤滑剤をプラスチックの注射器で吸い出し、手の中の肉棒の先端を上向きにすれば完璧。親指で注射器のお尻を押し込み、その液体を流し込んでいく。「……っ、おい…本当に、やめ」怖い?鬼道くんに限ってそんなことないか。「奥まで届いた?」睨まれたし口をきいてくれなくなった。ええ。届いたかな、もし届いてなかったら止めてくれるよね。

カテーテルも軽く潤滑剤で濡らして、その先端は入り口を目指す。持ち手から狙うの難しいね、次は綺麗な手袋を買っておこう。「痛かったら、言ってね」言ったらやめるからって痛くないのに痛いって言うのはやめてね。一言断って挿入していく。ゆっくり、丁寧にを心がけているけれど、意外とするする入っていくから心配になるな。半分くらい入ったところで彼の表情をうかがう。わたしから逸れた瞼が、唇が、僅かに震えていた。むず痒い感じなのかな。痛くはないみたいで良かった。少し不安そうな視線に、ぞくりと気管で空気が騒ぐ。ええっ、あの鬼道くんがなんて愛らしくていじらしい。

そろそろ奥まで到達するかという辺りで、更にゆっくり、慎重に。わたしも怖いんだよねこれ、吹雪くんに試したときは失敗せず前立腺まで届いたし上手だったとか全然痛くなかったとかお褒めの言葉まで貰ったんだけどいやそもそも痛くない?上手い下手じゃなくてこの行為自体が痛くない?もう怖くて仕方ないよ向き不向きもあると思うし痛そうだったらすぐにやめ、「っあ、」へえっ!!?いいい痛かった!!?

「だっだいじょ、」
「んっ…ぁ、くっ」
「…鬼道くん?」
「はっ…はぁ、っ…んぁ、」
「……?」
「…はっ、あ…神崎、も、もう…お、終わっ、らせ」
「へっ?えっ、でも」
「もうイった…ッ、あ、ひっ、ま…また、来るっ、や…やめろ、」
「んっ?えっ?あっイった?良かった、じゃあ続けるね」
「〜〜ッ!?は…ふぅっ、お、おい!もう…む、むりだ、こんな」
「大丈夫だよ、もっと、気持ちよくなって」
「あッ、い、いやっ、神崎!い、イく、イかせてくれ、最後、に」
「……じゃあ、また今度、同じことさせてくれる?」

今なら何を言っても了承を得られるのではないかと思うくらい必死な鬼道くんはわたしの問いに何度も頷く。言質とったぞ!「分かった、最後にびゅーって、しよっか」ゆっくりカテーテルを抜いて、込み上げるそれを促すように肉棒をさする。両手でわたしの肩を押し込み前屈みになって、太ももをひくひく痙攣させながら悶え射精を待つ鬼道くんがひたすらに可愛い。でも肩に体重をかけられるとちょっと痛い。次はちゃんと準備して、ベッドでしようね。

「っあ、〜〜っくふぅ、んん…ッ!」一滴、彼の頬を涙が伝う。我慢をしていた放精の感覚に取り繕うことも忘れて、解放感と快感とが入り混じる恍惚とした紅の瞳を晒してくれる。だらしなく開いた口から漏れ出るのは、痺れるような甘い吐息と嬌声。「あ…あぁああっ」尿道を圧迫していたそれを完全に引き抜けば、我を忘れるほど乱れてくれる鬼道くんは一際大きく喘いだ。少し遅れて、びゅるびゅると白濁が溢れてくる。潤滑剤を絡ませたそれはわたしの目の前まで飛んで、ぽたぽたと床に染みを作った。

どぷ、と最後らしい精子の塊を吐き出したあとは、尿道口から涎のようにそれが垂れる。そのいやらしい様に見惚れていれば、「いっ…痛い痛い痛い痛い!!!」鬼道くんに肩の肉を抓られた。痛い!ほんとに!痛い!!

「ごっ、ごめん!!だって、いっ痛っちょっ待っ喋らせて」
「黙れ」
「いっったい!!ちょっと、だ、大丈夫!!鬼道くん超可愛かった!!」
「黙れ」
「痛い痛いいたいっ待って、え?ち、ちぎれるちぎれる!!」
「黙れ」
「怖い!!ごめんってばでも後ろからが嫌だっていうから前からぁあああ痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
「だまれ」

待った、まじで、ほんと、え?痛い。無理。待って痛い。鬼道くんは涎を垂らすおちんちんを惜しげもなく晒しながら、あれ待って眼福?流石にその表現は変態っぽいなわたしは別にこのブツを見たいわけではなく、でも鬼道くんがこれをわたしに晒しているのだと思うとやっぱりがんぷ、「く、って待って痛いちぎれる!!!」本当にちぎる気だろうと思うほどキツく抓られ眼福どころじゃない。わたしが解放されるのは、痛みで本当に意識飛ぶんじゃないかと思い始める、今から1分2秒後のことだった。
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