イナズマ裏夢

□性欲、私欲、性行為
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「あ」
「え…」


ウィンと自動ドアを開けてサッカー棟内のミーティング室に入ると、そこにいたのは霧野くんとはまた別のツインテールっ子。

珍しく他には誰もいない状態だ。


「速水くん?早いんだね、他の皆は?」
「あ、えっと、あの…今日はみんな、委員会があるらしくて…」


ああそうか、そういえば今日は委員会の日か。
昔っから週予定だけは変わらないんだなぁ。


「そっか、ありがと……速水くん?」
「え、あ、はい…」
「いやあの…え?な、なんで逃げるの…?」


地味に傷付く。然り気無く離れていくその自然さが逆に身に染みて痛い。

一体なんだというんだ、私はまだ速水くんには手を出していないのに…!寂しいよ!


「…そ、その、…神童くんから、『由岐さんに興味本位で近付いたら痛い目にあうぞ、気をつけろ』…って」


うわーおっ、ちょっと拓人くんなんてこと言っちゃってるの君ってやつぁ!

何かする前から警戒されてちゃたまらないよ…!


「いやいやいや!拓人くんが大袈裟なだけだから!取って食ったりしないから!」


…いやどうだろう食べるかもしれない、…いやいやいや!!食べない大丈夫!!


私が慌てて否定すると彼は幾分か安心したようで、とりあえず(私とは対極の位置の)椅子に座った。

…けどなんか、これはこれで気まずい。


「…あ…あの、神崎さんは、どうしてここに…?」
「え、私?」


勇気を振り絞って沈黙を破ってくれたのだろう、声が震えている。

気を使わせちゃってどうするんだ私…っ!


「私は鬼道く…鬼道監督に呼ばれたの。相談があるー、って」


そうそう鬼道監督といえばあの人…監督に就任したとたん私の扱いが荒くなった。

部員たちのデータ収集を手伝えだの書類整理をやっておけだの挙げ句の果てには指定した時間にお茶を持ってこいとまで。

私はお前の秘書か。雑用係か。


「そ、そう…ですか…」
「うん、あ、速水くんは委員会は?」
「あ、えっと…交代制なんで、今日は、行かなくても大丈夫なんです」
「そっかー、それでみんなは行っちゃったってことか」
「みたい、です…」


交代制も変わらないんだ。なんだか懐かしいな。
もう一度中学校生活を過ごしてみたい気分だよ。


「…あの、」
「ん?」
「…神童くんや霧野くんや…浜野くんや倉間くんとは、どういう関係なんですか…?」


…これはこれは。
…フラグが立った、ということなのだろうか。


「…どうして、そんなこと思ったの?」
「え、い、いや、なんとなく…というか…っ」
「そっか、勘が鋭いんだねぇ。……知りたい?」
「…っ、…知りたい、です…っ」


…随分と積極的だ。

一人仲間外れは嫌だという心の表れか……それとももしかして、あの4人と私がどんな関係か、知っているのだろうか。

まあこの答えが返ってきた時点で、私の返答は一つなのだが。

…やっぱりかとか思ったそこのカノジョ、変態をなめてはいけないよ。


「そっか、じゃあ…教えてあげるよ」


一歩一歩、私は踏みしめるようにゆっくりと彼の元へ歩み寄った。

ああ、これで速水くんも、拓人くんの言う通り――私の毒牙にかけられてしまうのだと、他人事のように思う。


「…あ、あの、神崎、さん…?」
「ごめんね、いただきます」


もう、戻れない。

ごめんね、速水くん!



 
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