イナズマ裏夢

□割と本気で好きなんですよ
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外は専らどしゃ降りの雨。

天気予報では、今日は晴天だとまで言っていたのに。

仕事が休みで良かったと切に思う。

洗濯物をたたみながら、何の意味もなくそんなことを考えていたときだった。


ピンポン、と控えめなチャイムが鳴る。


こんな日に訪問者だなんて珍しい。宅配便だろうか。

この雨の中仕事をしなければいけない人は大変だなあとか思いつつもモニターを覗く、と。


「京介くん!?」


ずぶ濡れで玄関先に立つ、京介くんの姿があった。


「ちょ、待って!今開けるから!」


あんな格好でいては風邪をひいてしまう。

事情は知らないが、私の家に来たということは、私に助けを求めてるってことなんだろう。


外にいる彼に当たらないよう、そっとドアを開ける。

紛れもなく、京介くんだ。


「えっと、とりあえず入って!」


ぐっと彼の腕を引いて、家の中に連れ込む。

結構な力で引き込んだはずなのに、表情ひとつ変えない京介くんが怖い。


私は彼を中に入れてから鍵を閉め、再びびしょ濡れな少年に向き直った。


「…どうしたの?何か、あった?」
「……頼みが、ある」
「ん?何?」
「…これ、を」


そう言って彼がどこからか持ち出して差し出してきたのは、黒ぶちの小さな子猫。

生まれてまだ間もない…多く見積もって一ヶ月といったくらいだろう。

その猫は、寒さに震えて縮こまっていた。


「ど…どうしたの?この仔……」
「……近くで、拾った」


…ああなんだ、そういうことか。

それを聞いて、一気に脱力。


「預かってほしい、ってわけね」
「…………」


私が苦笑しながら告げると、京介くんは分が悪そうに視線を俯かせる。

まったく、世話焼きなんだから。


「いいよ、預かってあげる。だからお風呂入ってきなさい」
「……悪い」
「そういうときは?」
「……あ、ありが………と、」


相変わらずお礼を言うのは苦手なんだなあと思って再び苦笑をすると、彼は私をキッと睨んできた。













まず玄関でタオルを渡して身体を拭かせ、それからお風呂場まで行かせる。

京介くんがお風呂に入っている間に、私は子猫の身体を拭いて近くのソファーに布団を被せて眠らせた。


「あ、京介くんの着替え置いてないや」


危ない危ない、忘れたまんまだと後で怒鳴られるんだった。

そう思い当たって、私はクローゼットからなるべく男物っぽい服を取りだし、風呂場へ向かう。


とりあえずノックをするが、返事は待たずに中へと侵入。

まあ自分の家なんだから、侵入も何もないんだけれども。


シャワーの音がする。まだ脱衣所には上がってはいないみたいで、ほっとした。

とりあえず、着替えを置いておくという報告だけはしておこうと、私は入浴中の彼に向かって声を上げる。


「きょ…」
「はっ…ぁ、んっ…!」


…その前に、シャワールームの中から不自然な息遣いが聞こえてくることに気付いた。

ぴたりと、反射的に私は全ての動きを止める。


(…へ?)
「んぁっ…あ、由岐っ…う、〜〜っ……」


…私の前じゃ私の名前なんて絶対に呼んでくれないのによくもまあ。

どうしてこんなときに呼ぶのかな。


っていうかこれ、間違いないよね?間違いなくこれオナニーしてるよね?


「っあ、あ…!んっ、や、はぁっ……!」


お風呂場だと声が外にもれるとか、そういうことは思わないのだろうか。

というか、お風呂場にどんな興奮要素があるというのだ。


「由岐ッ、由岐…んぁ、イクッ…〜〜ッふ…!」


ああ、イッたみたいだ。京介くんは射精直前には声を上げないクセがある。

ちくしょう中に入るタイミングを逃してしまったじゃないか。


「っは…、ん……っ」


シャワーの水が床に落ちる音に変動があった。どうやら出したモノを洗い流しているらしい。

ああそうか、今が中に入るチャンスなのか。


そう思った私は、すかさず浴室のドアを開けた。



 
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