イナズマ裏夢
□いつだって悪いのは
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※いつにも増して意味不明
「マサキくんはさ、キスしたことある?」
「は…?」
唐突な話題に目が丸くなる。
もう少し前触れ的な何かがあってもいいとは思うのだが。
「キスだよ、したことない?」
「な、そ、そんなの、あるに決まってんだろ」
嘘だ。
大体女の人と二人っきりでいるだけでドキドキしてるのにキスなんてできるわけがない。
けれどこのひねくれた性格と無駄に高いプライドが『ない』と言うことを許さなかった。
「ディープ?」
「あ、ああ」
「何回くらい?」
「さ、さあ?10回くらいじゃねえの?」
止めろよもうこれ以上追及するな。
ボロが出るだろ馬鹿。
ディープキスなんてやり方から分からないし、この年で10回もキスを済ませてる男って…。
「へえ、じゃあ私ともしようよ」
「はあっ!?」
「ファーストキスじゃないんだし、いいでしょ?」
…相変わらずこの人は掴めない。
真剣な瞳の奥に、必ず何かを隠しているから。
冗談で言っているのか、それとも――本気、なのか。
「嫌?」
「い、嫌…というか、」
そりゃ、好きな人と初めてを経験できるんだから、嫌じゃない、けど。
俺にとっては人生に一度しか経験できない『ファーストキス』なんだから、こんなに適当に済ませていいものなのか迷ってしまう。
「…やっぱりマサキくん、キスしたことないでしょ?」
「なっ、あ、あるって言ってるだろ!それ以上だって、経験あるし!」
…自分で言って、血の気が引いた。
何を取り返しのつかないことを言っているんだ俺は、馬鹿じゃないのか…!
「ふーん、じゃあそれ以上のコトもしようよ。気持ちよくしてあげるから」
「っ、い、いいぜ…」
そろそろ意地っ張りも止めにしたいところだが元々こういう性分なもので、一度言ったことは何がなんでも突き通したくなる。
というかまだ中一になったばかりの俺がそこまで経験値を積んでいると信じる彼女にだって非はあると俺は思う。
「ん、じゃあキスからね」
「ん……」
由岐さんの綺麗な顔が近付いてきた。
ばっくんばっくんと心臓の音が五月蝿い。
聞こえたらどうするんだよ、頼むから収まれよ…!
「…ん、」
うわあああ唇!!舐められた!!なっ何これほんとにキスなの…!?
ふ、普通のキスって唇を重ねるだけなんじゃないのかよ…!?
「…口開けてよ、マサキくん」
「え、あ、ああ…悪い……っ」
く、口を…あ、開ける!?な、なんで開けるんだよ!?必要ないだろそんなこと!!
大体そんなことしたら唾液とか色々諸々気持ち悪いじゃんか…!!
けどやっぱ経験とかないからそんなこと言えない。ああもうあんな嘘つかなきゃ良かったんだ…!
「ん……」
「んんっ……ふっ!?」
唇が重なると同時に彼女の舌が俺の口の中に入ってきて、思わず噛んでしまうところだった。
なんで舌なんて入れるんだよ気持ち悪い気持ち悪い…っあ、でもなんか、ゾクゾクする、かも……っ。
「んーっ、ん…んっ…」
息が苦しい。いつまで掻き回すんだよ。
歯の裏とか舐めたり俺の舌を絡ませようとしたり、もうわけが分からない。
唾液が混ざってぐちゅぐちゅ言ってる。気持ち悪い、はずなのに、なんだか変な気分になってきた。
キスって、本当にこういうものなのか…?
「んっ、んっ、ん…っ!」
「…っは、」
やっと口が離れて息ができる。
口端に垂れた涎を手の甲で拭い、熱い顔を見られたくなくて視線を反らした。
「たどたどしいね。可愛い」
「っ、五月蝿い!つ、次のコト、するんだろ…っ!」
「あら、待ちきれないの?可愛いなあ」
話題を反らすためだったとはいえ、言った瞬間に後悔する。
あのまま何も言わなければ、彼女だって忘れていたかもしれないのに。
「じゃあ、始めようか」
そんな声とともに、由岐さんはズボン越しに下半身に触れてきた。