イナズマ裏夢

□最高のデートスポット!
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※あんまりえろくない
※でも放尿注意
※意味不明


「なあ、神崎」
「んー?」


珍しくうちに遊びにきた(のかは知らないが)風丸くんに呼ばれて首だけ振り向かせる。

視線をさまよわせたり指を絡めたりと、絶え間なく何かを動かし続けている彼に疑問符を浮かべながらも、返事だけは返しておいた。


「つ、次の日曜日、空いてるか?」
「日曜日?あーうん、空いてるよ」


途端、ぱっと表情を輝かせた女と見紛う少年に、私の疑問はますます深まるばかり。

だがそんな私を尻目に彼は自身の鞄を漁り始める。一体なんなんだ。


「あ、あのさ、その…日曜日、なんだけど…な、」
「?うん」
「い、一緒に出掛けないか…?」


ばっと風丸くんが差し出してきた紙きれは、とある遊園地の一日券だった。


こうして何故か私は、彼とデートをすることになったのである。











「いやー、案外お化け屋敷ってのも楽しいね」
「…スタッフの人は困ってたけどな」
「え、嘘、なんで?」
「…お前が全然怖がらないからだろ……」


はあ、とため息をつく風丸くんだがお前も表面上は怖がってなかったじゃねーかと反論したくなる。

まあほんとは内心怖かったみたいで、こっそり私の服の裾を掴んだりしてたのは知ってるけれども。


「っていうかせっかくの遊園地なんだからさ、好きな子でも誘えばいいのに」
「……別にいいだろ」


おお話題転換のために適当に言ってみたんだがなんだ風丸くん、好きな人いるんじゃないか。

…だったら尚更、何故私を誘ったのか。


「何、誘う勇気が持てなかったとか?」
「…勇気を振り絞ったんだけどな」
「は、何?なんか言った?」
「…何も」


頬を膨らませながらもつんっとそっぽを向いた彼に、なんだか上手くあしらわれた気がしないでもなかったが、あえて黙っておく。

まあ他人の色恋沙汰に口を挟むほど野暮じゃないってやつだ。


「それより…さ、あれ、乗らないか?」


ぼうっとそんなことを考えていると、風丸くんは数歩先を歩きながら私を振り返って、観覧車を指差していた。


「え、高っ…」
「都内最大だからな」
「へえ、そうなんだ」


そういえば私まともにこういった場所に来たことなかったんだなあとかついつい物思いに耽ってしまう。

そりゃ知識がなくて当たり前だ、…っと無理矢理自分の保身に入ってしまった。

仕方ないじゃないか、興味がなかったんだから。


「いいよ、行こうか」
「…あ、ッ…」


何の前触れもなく観覧車から彼へと視線を移すと、何故か俯いていた風丸くんは勢いよく私と目を合わせた。

一体なんだと首を傾げたくなったが、その前に彼の中途半端に突出している引っ込みのつかなさそうな手が視界に入ってくる。


ああさっきから何か言動が挙動不審だなとは思ってたけどなんだ、そういうことか。


「いいよ」
「、えっ…」
「『デート』したいんでしょ?ほら、手」


リードするのが慣れてるもんだから、自然と身体が動いてしまった。

左手を差し出すと、風丸くんは頬を染めて目を泳がせて戸惑う。

ああ、ツンデレがたまに見せるこういうところが可愛いんだよな。


「…ん、ああ……」


意を決したらしくそっと私の手をとる彼が多少なりとも嬉しそうであることを確認し、私はその手を握り返して観覧車へと引っ張った。












「透明なやつ、乗れなくて残念だね」
「別に、どれでもいいけど」


お化け屋敷のときとは打って変わって上機嫌な風丸くんに苦笑しながら、外の景色に目を向ける。

高いから街一体を見渡せるんだな。


「…ねえ、風丸くん」
「なんだ?」
「ほんとにさ、私で良かったの?好きな子いるんでしょ?」
「っ!」


かあ、と彼の頬が真っ赤に変化していく。押し倒したいなあなんて、こんな状況でも考えがそっち方面へ及ぶ私って一体。

それを考えていたことも手伝いつつ、私は黙って風丸くんの返事を待った。


「…俺、は……その、……神崎、がッ」


ゆっくりと言葉を紡ぎながら、風丸くんがばっと顔を上げた、瞬間。

ガコンッという機械音が私たちの会話を遮り、観覧車が揺れる。そして観覧車全体の動きが止まった。


「え、な、何…」
「…事故、かな」


なんてタイミングの悪い事故なんだろうか。

せっかく彼から好きな人情報を引き出せると思ったのに。


「…まあすぐに動くとは思うけど…」
「…っあ、」
「ん?どしたの風丸くん」
「い、いや…なんでも……」


内股に足を閉じ、外を見つめて黙り込んだ風丸くん。


彼がその両足をもじもじと擦り合わせた瞬間、私の脳内は急激に働いた。



 
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