イナズマ裏夢
□最高のデートスポット!
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「…大丈夫なの?風丸くん」
「え、な、なにが…っ」
「トイレ行きたくなったんじゃないの?」
「ッ!」
おお図星。正解のようだ。
ヤバイな、にやけがおさまらない。
「大丈夫?まだ15分はあるけど」
「べ、別に…ッ」
とは言いながらも意識すればするほど尿意は強まるみたいで、今度は手を足に滑らせたり足の間に入れてみたりしている。
そんな姿が可愛くて仕方なかった。
「…我慢できる?」
「っ15分くらい余裕だ」
ふいっと顔を背けた風丸くん。
彼に気付かれないように、私は席を立つ。
「でーも、我慢はよくないよ?」
「!?」
傍に寄って隣に座り、後ろから手を回してお腹を撫でるように動かしたまでの過程は約2秒。
そしていつの間に、とでも言いたそうな風丸くんを黙らせるためふっと首に息を吹き掛けた。
「っあ!?」
「ほら…」
ぐっ、と膀胱があるであろう辺りを力を入れて押してみる。
すると風丸くんはびくんびくんと跳ねて、慌てて股間を押さえ込んだ。
「お、いっ…!なに、してっ…!」
「だから、我慢は身体に良くないって」
「…な、何が、言いたいんだよ……」
「ここでしなよ、って言いたいの」
「――ッ!!」
耳まで真っ赤にして、私が言いたいことくらい分かってるくせに問うてきた彼へ、更に追い討ちをかけるようにそう言い放つ。
聞く方が悪い、と今なら迷いなく言える。
「そ、そんなの嫌に決まって…っ!!」
「でも無理でしょ?こんな状態であと15分…なんて」
「おっお前が何もしなければ、」
「何もしなくたって一緒だって。下りるときに他の人がいる前で股押さえてなきゃいけないのはもっと恥ずかしいよ?」
「…っ!」
こういう場面になると風丸くんはことごとく頭の回転が遅い。いつもは速いのに。
普段じゃ考えられないから、私なんかに言い負かされるなんて、きっと屈辱なんだろうな。
「…っけど、こんなところで…っ!」
「ここでしなきゃどこでするの?」
「〜〜っ…」
まあ問題は『どうやってするか』なんだけどな。
運がいいやら悪いやら、私たちのすぐ下の観覧車は下面以外が透明になっている特別なもの。
ドアの隙間から、なんて簡単にはいかなさそうだ。飲んでもいいが嫌がるだろう。
そんなことを真面目に考える私ってほんと根っからの変態だなと今再確認した。
…あ、そういえば。
「…ペットボトルならあるよ?」
「っ!?」
とはいっても500ミリリットルよりも小さいサイズのものだが…まあ無いよりはマシだろう。
再び向かいの席に戻り、バッグを漁る。
さっきゴミ箱を探すのが面倒で捨てなくてよかった。
「ほら、この中にでもしなよ」
「ばっ、馬鹿じゃないのかっ!?そ、そんな、ペットボトル、なんて…っ」
「たかがペットボトル、されどペットボトルだよー?蓋閉めて隠し持てば匂いもないし、溢れないし、見えないし」
あれ、考えれば考えるほどペットボトルって凄いものに思えてきた。
「い、いいっ!も、もう、下りるまで我慢する、から…っ」
「足もじもじさせて股間掴みながら何言ってんの風丸くん。もっかい膀胱押してあげようか」
「ばっ、やめっ…く、」
「あーほら、そんな大声出すから」
身体が跳ねたところを見ると、少し漏らしてしまったんだろう。まあ半分くらい私のせいなんだけど。
ああでもこのまま最後まで漏らすのを見てるのも楽しそうだ。観覧車の中じゃなかったらそうしていただろうな。
「私は絶対見ないから、さ……」
「っ……」
お、揺れた。
なんだ問題は私に見られることだったのか。
「後ろ向いて、耳も塞いでるから」
「…本当、か…?」
「うん」
くるりと彼に背を向けて耳を塞ぐ、…フリをした。
見えないのなら聞くしかないじゃないか。
風丸くんは私が見ても聞いてもないと思って気を抜いたらしい。
カチャリとベルトの金属音がして、それからズボンを下ろす音も聞こえる。
「…んっ」
少し力の入った小さな声。
それと共に、ペットボトルに何かが弾かれる音がしてきた。
「っは……ぁ、」
普段からそんな厭らしい声出すのとか聞かれてるかもしれなくて興奮してるのとか目一杯罵りたいけどここは我慢。
「んっ、んっ」
じょろじょろ、と絶え間なく響く音。気持ち良さそうな声。
今の彼の顔が安易に想像できる。
「は、あーっ……あ…んっ」
全部出し終えたらしく、音も声も一気に止まった。
…それにしても。
「可愛い声だったね風丸くん」
「ふぁあっ!?おまっ、聞いて…!?」
安心しきっている彼に背後から腕を回す。
こんなんじゃ私の欲求は収まらない。
だから少しばかり、付き合って貰おうじゃないか。