イナズマ裏夢

□きみに抱かれる口実と
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二十歳を超えて、個性が出るのはお酒の飲み方のまれかた。長い間ずっと友人やってきても、まだまだ知らないことってあるよね。「神崎〜〜…」ぐったりと背後からわたしを抱き竦めてこのまま眠ってしまいそうな風丸くんから香るのはアルコール臭。今日は雷門中のみんなで、一番誕生日が遅かった風丸くんの誕生日祝いという名の飲み会にやって来た。が。当の本人がこれだ。と、いうか、この歳の元雷門中サッカー部の面々は、総じてお酒に弱い。最初にぶっ潰れるのはたいがい染岡くん。次に円堂くん。それからばったばったと倒れ、残るのはだいたい、最近自分のお酒の限界を知った豪炎寺くんと、酒は飲んでも飲まれるなを徹底している鬼道くん、みんなのお世話係秋ちゃん。そして唯一普通にお酒に強いわたしの4人だ。

流れを裏切らずお酒に弱かった風丸くんがなぜかわたしに絡んでくる様を、鬼道くんが苦笑して見ている。豪炎寺くんがうつらうつらし始めたぞ。長くは保つまい。今のうちにそろそろみんなの送迎係、夏未ちゃんを呼んでおこう。それにしても、真面目で責任感の強い風丸くんがこんなにだらけているのは初めて見た。お酒って面白いなあ。「お前も大概にしておけよ」んん?まあまあ、意識も理性もはっきり残ってるから、多分大丈夫だ。鬼道くんこそ、そんなに強くないんだからわたしに付き合わなくていいんだよ。

そのときぎゅうっと、わたしの身体に回っている腕に力がこもる。「うお」ぐりぐりと、彼の頭が背中に押し付けられている感覚がある。風丸くんのファンにぶん殴られそうな構図だ。甘えてきているのか、どんどん密着度が上がっていく。これ風丸くん明日覚えてるのかな。思い出して恥ずかしい思いするんじゃないのかなあ。「なら引き剥がした方がいいんじゃないのか」でもさ、お酒は人を素直にさせるとか、普段閉じ込めてる欲求を解放するとか言うものだし、風丸くんは人肌に飢えているのかもしれない。酔っているときくらい利用されてあげようと思うのですがどうですか、鬼道アドバイザー。「…お前がいいなら、それでいいんじゃないか」心配してくれてありがとう。隣では遂に豪炎寺くんが落ちていた。南無。

「みんなー!迎えに来てくれたわよ!ほら起きて!」
「…相変わらずね」
「あ、夏未ちゃーんいらっしゃい!飲む?」
「またの機会にね。それじゃあ後は任せたわよ」
「だって、鬼道くん」
「お前も手伝え…と言いたいところだが、動けないんだったな」
「助っ人看護師さん呼ぶ?」
「今は国家試験に向けて勉強中だろう」
「試験は3月だっけ。終わったら冬花ちゃんも入れてまたみんなで飲もうね」
「そうだな。今日はどうする」
「3人しか生き残ってないし解散しようか」

わたしの答えを聞いて、鬼道くんは荷物をまとめ始める。「それじゃあな」夏未ちゃんのとこの執事さんにこの酔っ払いをみんな押し付けて、鬼道くんはさっさと出て行ってしまった。もう1人の生き残り、秋ちゃんはみんなから徴収済みのお金でお会計を済ませてくれている。わたしはそうだな、わたしに絡みつくこの酔っ払いをどうにかしなければいけないな。「すいません執事さん、この人はわたしが持って帰ります」変な意味じゃないけど、言葉選びを間違えたような気もする。そうですかと、執事さんはわたしと風丸くんと、その荷物を置いて、夏未ちゃんと酔っ払いを押し込んだ車に向かった。「あ、由岐ちゃん。風丸くん、お願いしてもいいかな?」うん、ありがとうね秋ちゃん。今度また、世話を焼かせるやつらがいないときに一緒に飲もうね。

秋ちゃんとも別れてさあ帰るかと、2人分の荷物を首にかけて立ち上がる。首に腕を回され身体には足を絡められて丁度良かったから、風丸くんをおんぶした体勢だ。普通に重い。早くタクシー捕まえよう。「ん、んっ」呻きにも似た声をあげて擦り寄ってくる、わたしの肩に顔を埋めた風丸くんのさらさらストレートがくすぐったい。「神崎……」あ、意識はっきりしてきたかな。耳元で囁かれるとそれもくすぐったいからやめてほしい。あときみのファンに埋められるから切実にやめてほしい。

「今からタクシー呼ぶから。マンションの方でいいよね」
「……もっ、と」
「ん?」
「…お前と、飲みたい」
「え?風丸くんもう限界でしょ」
「そ、そんなことない…」
「おんぶされたまま何言ってるの」
「……分かれよ、そんなの、口実だろ」
「え?」

わたしの疑問符に答えることなく、風丸くんがわたしの背中で縮こまる。お、落ちるよ。口実ってなんの?そのとき、首にかけた鞄の中で何かが光った。わたしのスマホだ。しゃがんで確認すると、ロック画面に鬼道くんの名前。『タクシーは手配しておいた』。ええ、さすが鬼道くん、気がきく。続けてぴこん、また鬼道くんからメッセージ。『今日くらい甘やかしてやれ』。甘やかす?もしかして風丸くんのこと?「…じゃあ、うち来る?」鬼道アドバイザーがそう言うので、まだ飲みたいとわたしの背中でわがままを言うお誕生日様に声をかけてみる。しばらく無言で微動だにしなかった風丸くんだが、寝たのかなと再び声をかけようとすると、すり、と、わたしの背中に小さな刺激を与えてくる。今のはもしかして、肯定の返事?

夜風の冷たさでお酒をさましながらタクシーを待つ。1分もしないうちに、居酒屋の前に1台のそれが停まった。完璧だよ鬼道アドバイザー。風丸くんを押し込んでわたしもその隣に乗り込む。運転手さんにうちの住所を伝えてさあ出発。こてん。お酒のせいなのか耳まで真っ赤にした風丸くんがわたしの肩に体重をかけてくる。あれ、さめたんじゃなかった、っけ。

マンションに着いて、風丸くんに肩を貸しながらエントランスの鍵を開ける。エレベーターに乗り込み俯いたままの彼を窺うが、無言無表情。肌の色だけはそんな彼を否定するかのようにずっと真っ赤だ。

部屋に着いて一直線に、風丸くんを引きずるようにベッドまで。放り投げるように、わたしより少し大きなその身体をベッドに誘導するけれど、風丸くんがわたしの肩に回った腕を離してはくれず、結局わたしも一緒に布団へ雪崩れ込んでしまった。「もう」酔ってるの、酔ってないの。そのまままたわたしの身体を自らの腕の中に閉じ込める、わがままなお誕生日様の落ちた視線はやけに熱っぽい。もぞもぞと抱き寄せられて、その鼓動が、走り込んだ後のような速さでわたしに伝わる。「酔ってないじゃん」さっきまで酔ってたんだ、と弱々しく、誰に届けるでもなく呟かれたそれは、胸焼けがしそうなほど甘い。「…酒の勢いで、どうにかなるかと思った」それを素直に言ってしまう辺り、まだ完全に抜けきってはいないらしいけれど。

「『口実だろ』辺りから?」風丸くんは黙り込む。もっと前からか。風丸くん、意外とお酒強いのかもね。初めてなんだからこんな無謀なことしてちゃだめだよ、酔った自分を演じたいなら、なおさら。「飲み直す?それとも、もう必要ないかな」暖房もついていない冷たい部屋、温まるはずもない指先がじん、と痺れた。誘われるがまま、彼の熱っぽい肌から体温をもらう。胸の小さな蕾にまで、わたしの痺れを分けながら這い上がれば、早急な愛撫にも風丸くんは呻き声を漏らした。「あっ…足、は、やめろ、」いつの間に脱いだのか彼の靴がベッドの脇にころがっている。ので、風丸くんの左足をわたしのそれで捕まえて、するすると下半身に擦り寄る。「おんぶしてるときから、ちょっと硬かったよね」もう完全にその気になっているそこを太ももに押し付ければ、最早開き直ったらしい風丸くんがぐっと強く、わたしの腰に手を回してきた。

「足、やめてほしいんじゃなかったの」
「…………」
「そっか、もうびんびんになってるのばれちゃったもんね」
「…やめろ」
「いいよほら、わたしに教えてよ、風丸くんがどれだけえっちな気分なのか」
「…っ」
「ずっと期待してた?みんなの前でわたしのこと抱きしめてその気になってたの?みんなの前で、わたしのことえっちな目で見てたの」
「……や、やめ」
「どくん」
「っ、」
「ってしたけど」

図星、というわけではないだろうけれど、自らの行動に羞恥を覚えたのかそれとも自らの痴態に覚えるのは興奮なのかな。足を絡めわたしの下へ彼を引き摺り込んで、今度は目を合わせて張り詰めたそこに太ももを押し当てる。服を捲り上げ相も変わらず滑らかな肌の両胸の中心部を親指と人指し指で抓ったり捏ねたりすり潰したり。「ふぁ、」成人男性が情けなく腰を揺らめかせる様は堪らなく加虐心を煽られる。ああ、でも、甘やかせって言われてるんだっけ。どうしようかな。

考え事をしているわたしに気が付いたのか、ふとわたしを見上げる風丸くんと目が合った。その瞳は甘く熱く情欲に濡れてわたしを誘う。わたしがその奥の真意を読み解こうとすると、ぱっと視線を落とされた。そんなに恥ずかしい欲望を溜め込んでいるわけだ。胸の内に、ぴりぴりとした嫌な空気が這い回る。まあ、うんそうだね、なるようになるか。首元にキスを落とし跡を残す。わたしの髪をすくその指が、もっと、と強請ってきた。望まれるがまま、熱い肌に紅を作る。わたしが何の気なく散らせたそれは彼にとって何に成るのか。痛み、快楽、それとも愛情。どれをとって、きみはそんなに視線を濡らすの。

胸、腰、お腹。背を丸めて下げていく視界に、欲望の象徴が映り込む。風丸くんが何を求めようと、いきり立つそこはお構いなく、ぜんぶ性感に変える。「っ、ん…!」まあいいや、その性感はまた、きみの中に溶かしてくれるんでしょう。窮屈そうに衣服を押し上げていたそれを取り出して、わたしへの期待と肉欲を露わにするその形を指先でなぞる。ぬる、と、人差し指に纏わりつく先駆けの汁をその出口に塗り付けてさあ準備は万端だ。こちょこちょ、と濡れたそこを擽りながら親指の腹で窪みを一周。亀頭を引っ張るようにカリ首の谷を持ち上げては離し擦っては揺らし。それらすべてを素直に受け取って、ひくひくと震える恥部が愛らしい。「あ、んぁっ、神崎っそれ…」親指でそれを続けながら他の指先で今度は裏筋を擽る。赤く染まり硬直して、そこは恥ずかしげにぴく、と小さく震えた。もっとされたい、でも恥ずかしい。でも恥ずかしいところを見られて、もっと気持ちいい。風丸くんが内側に秘める恥ずかしい欲望を、あまりに顕著にわたしに伝えてくれるものだから、また胸の奥で小さな疼きがわたしを焼いた。

指で輪をつくり根元からねっとりと擦り上げる。時々引っかかるくびれは入念に押し上げて、竿をじっくり愛でていると、風丸くんが何かを堪えるように息をのむ。こんな1人遊びみたいな愛撫じゃなくて、もっと焦れる刺激がお好みかな。それともわたしの何かしらで、ひとりじゃできないことをしてほしいのかな。「風丸くん今日ゴム持ってる?」何気なく聞いただけだったけれど、風丸くんはもごもごと言い淀む。持っていることが自分が期待していたことを知られるようで恥ずかしいのか、持っていないけどしたいと言いたくて言えないのか。んん、まあいいや、持っていてもその在りかは、わたしが玄関に放っている鞄の中だろうし。「じゃあ口で、ね」足の間に身体を滑り込ませ、その反り返る先端の恥部を口に含む。唾液で濡らして奥まで咥え込み、唇を擦り付けるように引き上げる。裏筋に指の腹を押し付け擦りながら、尖らせた舌先で尿道口を軽く擽りそれから亀頭を舌と唇で満遍なく締め上げるように吸い付いて。「はっ、はぁっ、それっやめ、ろ、ぁっく、あ!」やめろ、と彼が発するのは、いつだって吹っ飛びそうな理性を保つ手段だ。口先だけで愛撫を拒否して、情欲に溺れそうなギリギリの地点で息をするための、最後の抵抗。「あ…あぁっ、神崎…っ、出る、もう、ひ、ぁっ」そうして、それが聞こえなくなるのは、彼の意地も羞恥もぜんぶ、性の快感が押し潰してしまったそのときだ。

口の中でつんと込み上げるにおいを喉に通して、唾液とともにその白濁を舐め上げる。丁寧に念入りに掃除を終えて口を離すと、その光景をじっと見つめていたらしい風丸くんと目が合った。合った瞬間に逸らされたけど。「気持ちよかった?」ふい、と今度は彼の視線が意図的にわたしを避ける。聞かなくたって分かるだろと、その赤い耳がわたしを叱った。でもなあ。「っひ!!?」少し張り詰めている下腹部、所謂膀胱のあるその部分を押し込む。慌てて起き上がった風丸くんに制止されるけれど、ごめんね、やめないよ。「待っ、」風丸くんはびくびくと身震いをしてぐっと足に力を込める。けれど、それが寧ろ引き金になってしまったのか、あっ、と小さな悲鳴をあげて彼の足から力が抜けた。「も、漏れ、」意識ははっきりしてもまだ身体からはアルコールが抜けてないんだから、力入れちゃだめだよ。じょろろろ、とさっきどろどろと精子を吐き出したそこから漏れ始める透明な液体。咄嗟に通り道の根元を掴み、風丸くんは前のめりに倒れてもじもじと腰を揺らす。我慢している姿の方がよっぽどえっちいよ。まあ、あれだけ水分を摂取していたら、吐き出したくもなるよね。

「い、いやっ、嫌だっ止め、」
「我慢してたでしょ、いいよ出して」
「と、トイレ、」
「動けないでしょ」
「っ、お、まえっ、こうなるの、分かって…ッん、んっ」
「分かってたっていうか、1回もトイレ行ってなかったからいつ限界がくるかなって見守ってた」
「〜〜!!」

きつくきつく締め上げているのに、それはちょろちょろと尿道から滴っている。ぽつんぽつん、少しずつ布団にできた水たまりが大きくなる。漏れ出す量が増え始めた。「どうせ出ちゃうよ、それなら気持ちよく出そう、ね?」放出をせき止めている指をゆっくりと解かせる。風丸くんは嫌だ嫌だと顔を真っ赤にして目尻に涙を溜める。強情だな、どうせ長くもたないよ。「っ、あ」そのとき大きな波がきたのか、ぎゅう、と決壊を抑えつけるその奥からじょろじょろと溢れ出たそれが布団を濡らしていく。絶対に認めないだろうけど、イったときより気持ちよさそうな顔してるよ。「ん……っ、ふ、ぅっ、」わたしの視線に気が付いたのか俯く風丸くんは、それでもまだ顔を真っ赤にして耐え続ける。そんな彼を覗き込むように額を合わせて、息を荒くしながら最後まで出しきった風丸くんの快感に耐える顔を堪能して、一言。「やっぱりさ、風丸くんって恥ずかしいことしてるときが、一番興奮してるよね」ごちんっ、と頭突きをかまされた。


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