イナズマ裏夢

□ピニャコラーダの苦味に溶けて
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新しい体重計を探しに来た家電量販店で、高校ぶりの顔に会ったのはつい数時間前のことだった。「豪炎寺くん、だよね。久しぶり、ちょっと髪伸びたね?」お前はあんまり変わらないな。家電を物色しに来たのかと思えば、どうやら仕事の下準備らしい。まだ大学に通っているだろうに、無意識にワーカホリックなところも、変わってない。

すぐに別れたはずだったが、それぞれの用事に戻り俺がレジを出たところでまた遭遇する。そうして、これも何かの縁と、酒を買い込み彼女の家に転がり込むことになった。「いいのか、その…男を、家に上げて」「ええ?今更だね、どうしたの?」ああ、そうだったな。神崎は薄い笑みを口元に浮かべて、玄関の鍵をかけた。「あ、でも、『そんなこと』になったら、きみのファンに埋められそうだな」少し騒いだ胸の内には、耳を塞いだ。

キッチンから食材をかき集め出来合いのつまみを作ったところで、土曜夜のバラエティ番組を尻目に酒を流し込む。「美味しいな。豪炎寺くん昔から、料理上手だったもんね」本当に、何も変わらない。髪を耳にかける仕草も、品を損なわない口元も、胸焼けがするほどの甘い香りも。目を、意識を奪われる度に無口になることは分かっていたが、その沈黙を、決して彼女が破ることはなかった。

「この間、夏未ちゃんに会ったよ」
「そうか」
「あ、今の女優さん、いいよね」
「ああ」
「豪炎寺くんは、明日もフリー?」
「ああ」
「泊まっていくよね、お風呂沸かすよ」
「ああ」
「あれ、お酒なくなっちゃった」
「そうだな」
「ねえ、豪炎寺くんさ、いま、」

「『そんなこと』、考えてるでしょ」冷たい痺れが足先から這ってきた。「な、」互いに酔った今ならと思っていた。酒が回っているはずだった。彼女の前にはアルコール度数14%のピニャコラーダの瓶が空いている。少しの思考能力を奪うくらいはと、そう思っていた。「ごめんね、わたしお酒強いんだよね」俺との距離を詰めた彼女に手の甲をなぞられ、酒の入った重い身体はそれだけで自由がきかず立ち上がれもしない。

酒が、回ったんだ。身体を焦がす熱は、彼女に見惚れる度に重くなる唇は、全部、酒のせい。腹の裏が痺れるほどの緊張が走った。それは掴まれた手首にまでのぼって、漸くそれを緊張だと理解する。ああ、やっぱり、俺はかなり酔っているらしい。「…こんなに腫らしちゃって、もうおさまらないね」逸らせなかった意識と熱が溜まるそこを、神崎の指先が撫で上げる。ソファからずり落ちるように、少し、足を開く。彼女は笑みを深くして、腿を撫で、爪でその布を引っ掻いた。その刺激が身体の芯にまで響いて、彼女の作る熱に身体中が支配されているような、甘くむず痒い動悸に唇が震えた。

濁る声に喉を侵され、切なさのような疼きが心臓を這う。血管を内側から押し拡げるそれは、つま先まで落ちて身体を震わせ、それから頭にのぼって顔を熱した。「っは、ぁ…っ」腿ばかりを温めてくる細い指に、口では何も言えないくせをして、その先を強請るように腰が揺れる。浅はかな無意識に、また頬が火照り耳を焼いた。「おねだり、上手だね。でもだめ、ひとりでするところ、見せて」熱に浮かされた鼓膜に届く甘い囁きに思わず目を見開く。神崎は俺の前まで身体を割り込ませ、指先でベルトのバックルを撫でて遊ぶ。「ほら、豪炎寺くんの恥ずかしいひとりえっち、わたしに見せてよ」鳥肌がたつほどその息に濡らされる。ベルトに、手が伸びた。

ジッパーを下ろし下着からそそり立つそれをゆっくりと取り出す。今更それを恥ずかしいとも思わない、はずなのに。「こんなになるまで、わたしの話なんて上の空で、ずっと、えっちなこと考えてたんだ」不純な考えではなかったはずだ。それでも、いつかの彼女を懐かしむ度に、体温は上がっていった。そうして心のどこかに湧いていたらしい欲を、こうして見られているのだと思うと、ましてそれを確かめるように言葉にされると、緊張にすら似た胸の騒ぎに身体が焦がされる。その久しい感覚に押されるまま、指を上下させて、「変わらないね、虐められるの、好きだもんね」ぞわりと、内腿が快感に波立った。

「必死になって、かわいい」
「っ…や、やめてくれ」
「ええ?なにもしてないよ。豪炎寺くんが、ひとりでえっちなことして、興奮してるだけでしょう」
「やっ…たのむ、もう」
「なに?いいよ、出して。ひとりで、しこしこ、ぐにぐにってして、わたしとしたくてずっと我慢してた精子、ひとりで無駄撃ちして」
「…っ!ぁ、くっ、ま、待っ、」
「…あれ、いま出そうだったんじゃないの?どうしてやめちゃうの」
「あ…っぁ、んんっ…神崎…っ」
「……なあに」
「しっ…して、くれ…もっと、ちゃんと」
「『ちゃんと』?」
「…こ、とばぜめ、じゃ、なくて」
「またまた。悦んじゃってるくせに」
「っ…」
「…寸止めしてまで、わたしにしてほしいんだ。いいよ、虐めてあげる。でもほら、わたしの指、まだ冷たいんだ」

柔く手の甲を頬に当てられ、俺の熱を冷やされる。「だから、あたためてくれるよね」喉が鳴った。ひやりと冷たいその手を取り、自らの熱を分けるように頬擦りをする。口元に当たる指を、酒が焦がした舌で迎える。「…舐めろって意味じゃ、なかったんだけど」「っ、」確かに、舐めろとは言われていない。温めるなら、他にもやり方があった。それこそ、俺の体温を分け与えるように、その指に触れるだけで良かったはずだ。「いやらしいなあ。もしかして、こっちに、入れてほしいって意味?」睾丸の裏側に逆側の手が当たる。少し身体を突き出せば、神崎の笑みは、深くなる。とん、と、その孔を、服越しに探り当てられた。「きゅんってなったね。正解?じゃあ、指、ちゃんと濡らさないと、ね」細い指が、俺の舌をなぞってくる。誘われるがまま、唾液を絡ませ、吸い付いた。

舐るうちに、味のなかったそれに、甘味を感じる。溢れそうになる唾液を一度飲もうと口を閉じるが、喉を上下させる前に、それを掻き出すように舌をなぞりながら指を引き抜かれる。「美味しそう」案の定零れた体液を舐めとるように、口付けを施された。「脱いで、拡げて」想像をするだけでぞくりと心臓が騒ぐ。腰を上げて、半端にずらしていただけの服を床に落とせば、すっかり熱を染み込ませられたその指が、早急に肛門をなぞって、「んん、やっぱり、ちょっと硬いかな。こっちに背中向けて、お尻突き出して」どういう意図があるのか察した身体が、括約筋をきゅっと引き締め名残惜しげに彼女の指を引いた。

言われるがまま、ソファの背にしがみつくように体を預け、立ち上がった彼女の前へ尻を突き出す。ひくひくと、強請るようにその穴が開閉している。風呂、先に借りておけば良かった。「だーいじょうぶだよ、ぜんぶ舐めて、綺麗にしてあげるから」ーーいまなんて言った?舐める?ローションじゃなく、「神崎ッ、…っ!?あ…っき、きたな、い、から」滑りのあるそれが、物欲しげにひくついていたその入り口に押し込まれる。吐息がかかって、熱くなっていく。「や…やめてくれ、そんな、ところ……っ」だんだんと、拒絶が弱くなっていく。恥ずかしい。情けない。そう感じる度に耳がキンとした。こんな状況で俺はまだ、いや、こんな状況にすら、興奮、するのか。

細く舌をねじ込まれる度に、腰の奥に快感が響く。どくどくと、やけに下半身の血の動きを感じた。それはまた、陰部に伝って、落ちていく。「ん……っ、ふ、ぅん、」甘い吐息しか出てこない。それも、水音だけが籠るこの空間では、堪えられなくなってくる。何度も穿るようにそこを解され、身体の力がまた抜けていく。時折彼女が漏らすつっかえるような息継ぎが触れるたび、下腹部がじんじんと痺れた。「ん、かわいいなあ、お尻ひくひくしてるね。そろそろいいかな、せっかく熱くしてくれた指、乾いちゃう」最後に唾液を塗り込まれ、その舌が離れる。間髪入れず、柔くなった入り口を拡げられた。

「あっ、自分で拡げておねだりしてほしいな」もう散々強請っただろうと泣き言が出てきそうな唇を引き結び、額をソファに押し付け両手でその穴を広げる。酒のせいでいつもより大胆になっている自覚はあるが、今更もう、どんな恥を晒そうと、同じだ。「…指、いれて、裏側、…こりこり、して、くれ」上手い言葉が見当たらず稚拙な表現が口をつく羞恥を噛む。満足したのか神崎はゆっくりと、傷をつけないよう、裂けないよう慎重に、内壁を押し広げながら細い指を挿し込んできた。「ふっ…ぁ、く」息を吐いて、その異物を受け入れる。肉壁がそれを押し潰すように侵入を拒んだ。柔い肉が暫く進んだところで、ふいに収縮する中を広げられる。表層を撫でるように何かを探る手つきに、息が震えた。

「っ、ひ…っ!はっ、ぁふっ、」
「みつけた。こりこりってしてほしいんだよね」
「あッ、〜〜っ!待っ、ぁ」
「すごい鳥肌。気持ちいい?こっちも一緒にこすこすしよっか」
「っ!?や、ま、待てっそ、んな、あ、あっ、ぁあっ…」
「んん、かわいい。陰嚢、きゅってなるのよく分かるね。この中、もう精子がぐるぐるってしてる?」
「ふっぁ、も…もう、」
「あ、たまたまが上がっちゃうね。もう、びゅくびゅく、したい?」
「…っし…した、い」
「なにを、かな」
「……しゃ、せい…っ」
「射精?そうだね、でも、ただの射精じゃないよね。お尻の気持ちいいところ穿くられて、言葉責めをオカズにしてひとりでしこしこって溜めたどろどろの濃い精子、女の子が犯されるみたいな体勢で、搾られたいんだよね」
「〜〜ッ…やめ」
「もう出るよね。じゃあ、準備してね。せーの、ごーーお」
「は、ぁっ…!?」

もう足の付け根に快感が溜まり始めている。陰茎を擦る手も、吐精を促している、のに。「よーーん」『それ』に向けて無意識にも身構える身体と、まだもう少し我慢をしろと『それ』を塞きとめる理性に騒がされ、心臓が激しく身体を鳴らす。「さぁ、ん」どく、どくと、血液までもが跳ねるような鼓動。なにより、期待を募らせる心が、より体温を上げる。「にーー、ぃ」昂ぶる身体が、強張った。「いち」びくん、と、腰が跳ね上がる。無理だ、もう、で、出っ、「ぜぇ、ろ」「〜〜っあ、あぁっあ、っひ、ぃっ…!」太ももに快感が張って、足の指先まで落ちる。彼女の指の先から押し出された塊が、尿道を擦りこじ開けながら搾り取られていく。身体が仰け反るほどの甘美な痺れに、視界がちかちかとした。「んっふふ、たくさん、びゅう、したね」神崎の声が遠い。だめだ、このまま、落ちて、しまいたい。「恥ずかしい射精、可愛かったよ。おやすみ」ああ、もう、嬲るか甘やかすか、どっちかにしてくれ。
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