チビと俺
□第2話 兄妹
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母さんが早く帰ってきてくれたことは本当に嬉しい。嬉しいのだが、どこからどう説明すればいいのかが分からない。
「あの、母さん……あの……」
「豊……」
母さんの視線は俺ではなく、ソファで、また寝始めている日余里にいっていることは明らかだ。
「いや、違くて……」
いったい何が違うのか、自分自身でも分からないが何故か言い訳をしようとしてしまう。
「その子……日余里ちゃん……よね?」
「は?」
母さんからの思わぬ発言につい、間抜けな声を出してしまった。
(な、何で母さんこいつのこと……)
(あ、そっか。日余里は母さんに用事があってウチに来てたんだ……。忘れてた……)
「ちょ、ど、どうしちゃったの、日余里ちゃん」
俺の近く、もとい日余里の近くによって来た母さん。
「あー、こいつ熱あんだよ」
「熱!? 何度?」
「……39・2度」
「39・2度!?」
「ちょ、あんた何してたの!?」
「何って…………」
「いいから病院! 病院連れてくわよ!」
「連れてくたって……こいつ起さねぇと」
「あんた抱っこして車まで運びなさい!」
「はぁ!?」
「男なんだからそれくない出来るでしょ!?」
「そりゃ出来るけど……こいつの服びしょ濡れなんだけど……」
「はぁ!? 何でよ!」
「雨の中ずっとウチの前で母さんのこと待ってたらしい」
「……ったく! 日余里ちゃんに母さんの服着せるから、日余里ちゃんを母さんの部屋まで運んで!」
「はいはい……」
(人使い荒いっつーの……)
ヒョイと日余里を姫抱っこして母さんの部屋まで運んだら、締め出された。
何分か経って開いたドア。その向こうの日余里は、母さんが持っている服の中から1番若者が着るようなワンピースを着させられていた。
でも、その服の大きさと日余里の体の大きさが決定的に違う。本来は膝上くらいの裾。それがふくらはぎの真ん中まできていた。
「ほら、さっさと車に運んで!」
「言われなくてもそうするけど」
車の中に日余里を横に寝かせると、俺が座る場所がなくなった。
前席には荷物がゴチャゴチャあって座れない。後席には日余里が横になっている。
「早く乗りなさい!」
「や、そんなこと言われても座る場所がないんですが」
「足の上に日余里ちゃんの頭乗せれば座れるでしょ!」
(……まぁ、でも……まくら代わりになって……日余里には良い、のかな?)
とりあえず母さんの言うことを聞くことにした。
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