チビと俺

□第6話 3年生
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「ちょ、母さん! それ、どういうことだよ!」

「どういうこともそういうことよ」

「家族って……」

「あー、家族って言っても『一時的に預かる』みたいな感じよ?」

「『一時的に預かる』……?」

「そう、ちょっと訳ありなのよ日余里ちゃんは。いや、正確に言うとちょっと違うけど……」

「まぁ預かるって言っても、もう誘拐みたいな勢いだったけどね……」

「1人でブツブツ言ってねぇーで、ちゃんと説明、してくれよ」

「…………日余里ちゃんのことは私からは何も言えないわ」

 ピリッ、とした空気が、肌に刺さった。

「……何でだよ」

「知りたいなら直接聞きなさい」

「…………」



「あ、あと」

「……今度は何だよ」

 ちょっとイラついてきたぞ、俺。

 なのに母さんは話かけておきながら話始めねーし、しかも目も合わせねぇ。

 つかキョドッてる。





「んだよ! ハッキリ言え!」


 バンッ! とテーブルを両手で思いっきり叩いた。


「…………日余里ちゃんは、いつまで預かっているかは分からないわ」

「……ふぅん?」

「それで……」

「それで?」

「その……」

「その?」

「えと……」

「えと?」

「だから……」



「だから何だよ! さっさと言えって言ってるだろ!?」



「……じゃあ言うわよ」

「おぉ」

「言っても文句、何も言わない?」

「あぁ、つかさっさと言えよ」

(もうキレる寸前……)

「ウチ、今部屋余ってないの!」




「だから日余里ちゃんがウチにいる間は豊の部屋、一緒に使ってもらうことにしたから!」




「じゃ、良い夢を!」



「ちょっと待て」

 リビングのドアノブに手をかけられる前に、手首を掴む。

「だから日余里ちゃんがウチにいる間は豊の部屋、一緒に使ってもらうことにしたから」

 まるで機械が喋っているような口調でしゃべるこの……クソババァ!


「ちょっと待て、何で俺の部屋なんだ?」

「だって日余里ちゃんと仲良いし?」

「それとこれとは別問題だろ!」

「だってー。あとどこに居させるのよ」

「母さんの部屋に居させればいいだろ!?」

「私すぐに自分の部屋は汚くしちゃうんだもん」

「んなの関係あるか!」

「あるわよ! てか文句言わないって言ったじゃない!」

「これは文句とかのレベル超えてるっつの!」

「あーもう、うるさい! おやすみ! じゃあね!」


 無理やり俺の手をほどき、寝に行った母親。もとい、クソババァ。


「何? 俺はずっとソファで寝なくちゃいけないわけ……?」


 もう、怒りを越して悲しくなってきた。

 あー、いいや、今考えるのメンドクサイ。


 将来、俺のベッドになるであろうソファで眠りに落ちた。



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