チビと俺
□第7話 寝床
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「ありえねぇ……まじでありえねぇ」
「豊……?」
中から聞こえる日余里の声に、ついドキリと胸が高鳴る。
「私も……水……」
「悪ぃ……」
1歩前に進み、体をどかすと、ドアが開いた。
「あっ……!」
「あ?」
顔だけ動かし、背中のほうを見ると日余里が前のめりになっている。
「なっ」
――フニャッ――
「っ!?」
日余里はそのまま俺の背中に抱きついた。腹のほうに手が回っていて、腰のところに何か柔らかいものが当たっている。
「ちょ、離れろっ……!」
「ごめ……でも……頭、クラ、クラ……して……」
「なっ……ちょ……」
柔らかいものへと、腰に意識が集中していく。
(くっそ……!)
俺は細い日余里の腕を引っ張り、抱上げた。
「っ!?」
そのまま姫抱っこに変え、部屋に入り、ベッドに寝かせる。
「水は持ってくっから! クラクラしてんならさっさと寝ろ!」
多分俺の顔は今、赤い。
「…………フニャって……」
(胸なんて気にしたことなかった……)
(あー……何なんだよ、俺……。日余里が1つ違いって分かった瞬間意識し……)
(……てねぇよ! 別に俺は……!)
リビングで水を飲んでから、新しいコップを出してその中にもう1度水を注いだ。
「入るぞー……」
普段より、少しだけ速い鼓動を無視して平然を装う。
「ほれ、水……ってまた勉強かよ?」
部屋に入るとまた机に向かっている日余里。
「ありがとう……」
俺の手からコップを受け取った日余里。つい、日余里の胸に視線が泳いだ。
(……意外と……ある……っつーか……大きい、ほう……?)
(って、俺は何考えてるんだよ!)
「…………お前、高校どこ受けるんだ?」
「崎玉……」
「崎玉? へー……」
「豊、崎玉……だよ、ね?」
「あぁ、そうだよ」
「制服、見たときから……気になってた……の……」
(気になって…………たのは制服!)
「あ、の……ここ……分かる?」
「あー?」
日余里の指先には図形の問題が。
「えーっと…………ここのXを代入して…………」
「あ……なるほど……。豊、ありがとう」
「ぅ……お、おう」
(あー……なんかすっげぇカワイ……。だぁー!)
「……なんかお前、今日はよく喋るのな……」
「あ……うるさい……?」
「そーじゃねーって。ただ単に最初に比べたらって話」
「……私……初めての人、とは……うまく、喋れなくて……」
「ふぅん……? つかさー、その前髪勉強のときはさすがにジャマじゃね?」
「これ、は……その……」
両手で前髪をおさえ、下を向く日余里。
「恥ずかしい……と……あか、く……」
「赤く? 何が?」
「か、お……。私……慣れてない人……だと、すぐ顔赤く……なっちゃう、から……」
「へー」
(赤面症みたいなもの?)
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