チビと俺

□第8話 デート?
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「朝……か……」

 カーテンの隙間からチラつく朝日が目にささる。

「まぶし……」

 俺の胸から聞こえた声に目線をやる。

「ぅお……!? ……あ、そっか……」

(昨日、こいつ泣いてたんだよな……)

日余里が目を覚ます前に俺は日余里に背中を向けた。

「もう朝……」

 目をこすりながら上体を起こす日余里に気づいて、俺も目を覚ました『ふり』をする。

「日余里……? はよ」

「おは、よう……。ごめん……起こした……?」

(本当は俺が起こしちまったんだけどな……)

「べつに、大丈夫」

「私、今日は学校行ける……かな……」

「母さんの許可とれたらなー」

「行きたい……な」


「ま、とりあえずリビング行くかー」






「母さん、はよー」

「あら、今日は早いわねー」

「おばさん……おはよう」

「おはよう。今日はどう? だるくない?」

「元気、だよ」

「本当に? 今日もやっぱり休んだほうが……」

「大丈、夫!」

「そう……? よし、じゃあ着替えてらっしゃい」

「あ、うんっ!」


 小走りで俺の部屋、もとい俺たちの部屋に行く日余里。その背中が見えなくなると俺は母さんに話しかける。




「母さん、いったいどういうことだよ」

「何が?」

 朝飯を作る母さんは俺に目もやらない。

「日余里、何で中3だって言わなかったんだよ」

「あら、何? もう気が付いちゃったのー?」

「やっぱワザと教えなかったのかよ!」

「だってそれ教えちゃったら豊か、絶対に日余里ちゃんを部屋に住まわせないでしょー?」

「ったりまえだろ!」

「ふーん……でもそのくせ一緒にベッドで寝ちゃったりして……」

「は!?」

「え、何? 本当にそうなの?」

「え、あ、いや……」

「ソファにいないし、お布団も減ってないみたいだから適当に言ってみたんだけどなー」

「へー、そうなのかー。襲っちゃだめよー?」

「んなことするかボケ!」

「母さんはまだボケてないわよ」

「……クソババァ」

「朝ご飯ゴミ箱に捨てようか?」

「すいませんでした」






 ――バシャッバシャッ――

「ふー……」

 濡れた顔と前髪をタオルで拭き、目の前の鏡に目をやる。

 自分の後ろにもう1人。

「豊、鏡使う?」

「っ……」

(制服……)

 ブレザーに身を包んでいる日余里。

(うわ……本当に中学生だ……)

「豊……?」

「あ、いやっ……」

(制服、すっげー似合ってる……。カワ……だぁぁぁぁぁ!)


「俺も着替えてくる!」

「あ、うん……」






「ごちそうさま」

 俺が食べ終わると、日余里が俺の分の食器も台所に下げてくれた。

「……マスク?」

 日余里は前髪を斜めにながし、それをピンで留めてマスクを着けている。

「学校では前髪留めるんだな」

「学校だと前髪、注意される……から」

「ふぅん……ま、勉強頑張ってこいよ。んじゃ行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「おぅ」



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