チビと俺
□第10話 家出少女第2号@
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「日余里、帰り何時くらい?」
「分から、ない……」
着替え終わり、日余里も用意が終わり、2人一緒にドアを跨ぎ、寒い外に出る。
「家、誰もいなくなるから鍵かけてくんだけど……。……じゃあ、家に帰ってくるときにメールか電話くれ」
俺は家の鍵をガチャリとかけた。日余里のほうに顔を向けると、日余里は頷く。
「てか、日余里はどこ行くんだ?」
「……友達の、家……。勉強しに……」
「勉強かよ。えらいなー」
歩き始めた俺の斜め後ろを、日余里はちょこちょこと着いてきている。どうやら方向は同じらしい。
「日余里、電車?」
頷いた日余里に俺は「俺も」と返事を。
「じゃあな」
俺が降りる1つ前の駅で日余里が降りた。
「バイバイ」
鈴美の家は次降りる駅と、崎玉の最寄り駅の間にある。どちらかというと、次の駅のほうが近い。
(何でいつもあのコンビニ使うのかなー……)
「鈴美? もうすぐ着くからなー」
電話をすると、なんとも元気のよい返事が返ってきた。
「家の外で待ってるね!」
「あ? 寒いだろ? 別に……。……あー、分かった。できるだけ早く行くわ」
「うん!」
そりゃ、普通なら家の中で待っててもらうところだ。しかし、鈴美の両親がまた喧嘩をしているのかもしれない。そう思うと「家の中で待ってろ」などと言えなかった。
「ゆーたーかっ!」
鈴美の家に着く前に、鈴美の姿が目に入る。
「よぉ。って……それ、寒くねぇの?」
まず目に入ったのはスカート。いつもの制服のスカートもこいつは短いが、それよりも短い。上に羽織っているコートの裾よりも短かった。コートは前を開けている。
「あ、このスカート? どう? 似合う?」
鈴美はスカートの裾をつまみ、少し上にあげた。
そしたら、今度は本当に下着が見えそうになる。それにギョッとした俺は頭を少し掻きながら目線を下へ動かした。
「あー、似合う、けど……」
「やったぁ! これ、新しく買ったやつなんだー! 可愛い? 可愛い?」
そう言って俺の前でクルリと1回転してみせる鈴美に余計に驚く。
「……まぁ、可愛いんじゃねぇの?」
「えー、何よその反応ー」
ブー、と今度はむくれる鈴美に俺は失笑する。
「え、何でそこ笑う?」
「いや、百面相だなーっと。それより、ほかの男の前で今みたいなのやんなよ?」
「え?」
鳩が豆鉄砲を食らったように、鈴美はきょとんとする。
「あー、下着見えるぞって意味」
「あぁ! へへっ」
何故か嬉しそうに鈴美は俺の腕にしがみ付き、ゆっくりと歩き始めた。
「何が嬉しいんだよ」
「なーんでも! へへへー」
「気持ち悪いな」
「何よー! でも、豊なら下着見られてもいいんだけどなー、なんて」
「は? そりゃ幼馴染だけど……俺、一応男なんですけど」
「今の言葉をそういう意味にとる豊に私は心底尊敬します」
「はい?」