極小話

□俺達の関係 番外編
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優等生(水瀬)×アホな不良(藤崎)

◆ある水曜日の放課後◆



「僕さ、藤崎見てるとすっっっごいイライラすんの」
「はぁっ!?」

放課後の学校の焼却炉の陰。水瀬と出会って早3年。
美化推進委員が見回りに来る曜日と時間は熟知している。
先公から絶大の信頼を受ける水瀬が見回り当番の水曜日は、先公は来ない。

水曜日の放課後になると、俺はここへ来る。
そしてその後ここで落ち合うことが暗黙の了解になっていた。


今日も例外なく煙草をくわえながら水瀬が来るのを待っていたのだが。

来て早々、いきなり水瀬がそんなことを口にするもんだから、自分でも分かるぐらい変な声が出た。

「ケンカ売ってんのかこの野郎!」

俺は俺でいつものように噛みつくみたいな反抗をした拍子に、くわえていた煙草が足元の草むらに落ちる。
「っやっべ!!!」
ガシガシガシ

慌てて踏み消す。
ボヤでも起こせば、どんなめんどくせーことになるか分からない。


「はぁ…ほんとイライラする」

その様子を横目で見つつ大きなため息をこぼす水瀬。
今まで焼却炉の陰での会話で、そんなことを言われたことはない。
(プレイの一環としてならあるけど)

「意味分かんねぇし」

普段から口喧嘩(正しくは藤崎が言い負かされているだけ)はするが、水瀬の口調はいつもの雰囲気ではない。
あのなんだ、アンニュイ?っつーの?


「藤崎見てると、殴りたいような泣かせたいような願望に陥んの」
俺を真顔で見たまま、続ける。

「…それお前がSなだけじゃね?」

事実、口では勝てないし、勝てないどころか心をズタズタにされることも多い。
(水瀬は俺をドMと言うが絶対に認めてやらん)

「何だろう、破壊衝動みたいな?いや支配欲?」

考えて出した答えがそれかよ。

「こぇーよ…」
まじ怖い。何言ってんのまじ!


「何だっけ、藤崎と仲いい厳つい…」
「あぁリュウ?」

「そうそう、一緒に居るとことか抱きついてるとことか見るとさ、すっごいイライラすんの。



何でなのかな」

水瀬はじっと俺を見つめる。

〈何でなのかな〉

「……〈何で〉?」

「うん」

まじか。

え、いつから?
ほんとに?

答え、それしかねぇじゃん。

「………それ、は…」

顔が赤くなるのが自分でも分かる。

お前賢いんじゃねぇの、分かんねぇのかよ。




ほんと意味分かんねぇ。


「……俺、頭ワリィから分かんね」



「そっか、別にいいんだけど」





fin.初めて抱く気持ち
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