図書館連載
□In the fight
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あっという間に残りの二人も取り押さえると、良化機関が撤収していった。
「有難うございます。怪我は大した事ないので大丈夫」
「…そうじゃないね。殴られたのは頭とお腹だけ?」
心なしかフラフラする体を叱咤して頷く。頭からは血が出ているのか、右目が開き辛い。
それよりも郁は、と尋ねると自動ドアにぶつかったみたいだよ、という思いもよらない返事に愕然とする。
「そうですか…」
良かった、と続ける前に僕の体は傾き、意識も途切れた。
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…煩い。堂上二正の怒鳴り声が聞こえて目が覚めた。
「あ、前橋さん目覚めた?お医者さん呼んで来るね。」
重い瞼を開けると優しく笑う小牧二正が居た。どうやら貧血になった僕は今まで寝ていたらしい。
「さて、異常はないって事だけど…」
怖い。笑顔が怖いです小牧二正。笑ってるのに目が笑ってないです。
「なんで笠原さんと一緒に本を運ばなかったの?」
「郁のが速いし、二人も要らないと思いました。客観的にみて、その時の最善の対応を…」
「それはいい心掛けだよ。だけど前橋さんは女なんだから、肉弾戦になると不利だって事は解るだろう?俺や手塚に助けを求めても構わないから。」
その事実は常に頭の片隅に置いていた、筈だった。改めて言われると心に響く。
「…すいませんでした。」
「今度からはちゃんと危ないときは言うんだよ?」
そしたら、俺が絶対助けてあげるから。
小牧二正はそれだけ言って、何時もの笑顔に戻り、じゃあ寮へ帰ろうか、と立ち上がった。
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帰ってきたものの夕食を食べる気にならなかったので、部屋で寝ていると騒ぎながら二人が戻ってきた。
「聞いてよ朔、皆笑い過ぎなの!!教官は怒りすぎだし…」
なんとなく想像できる光景に笑いが込み上げる。
意識がなかったのが非常に残念だ。
「二正の怒りっぷりは凄かったよね。僕それで目が覚めたもん。」
…いつかハゲるのでは、と柴崎と盛り上がったのは堂上二正には内緒だ。
肉弾戦と貧血
あ、助けてくれたお礼言ってない…、