幸福喫茶連載
□07
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雨の中、今日もボヌールにいっくんを置いて、
いつもは駆け抜ける道をお気に入りの傘を差して歩く。
するとケータイが震えた。相手を確認して通話ボタンを押す。
「どしたのかしわん」
『一希、今どこにおる?』
「道」
『…まぁええわ、幼稚園にさくら迎えにいってんか?雨やから』
「あいさー、じゃね。」
電話を切っていつもの曲がり角をスルー。
幼稚園は確かこの道を突っ切ったとこにあったハズ。
****
「あ、一希ちゃんだー!!」
「よっす、さ、帰るよー」
無事幼稚園に到着。
さくらちゃんを探していたら、向こうからやってきてくれた。
よっしゃ、探す手間が省けた。
「じろうくんバイバーイ」
「バイバイさくらもち」
「あ、じろちゃんだ」
さくらちゃんが振り返って手をふったのがなんとじろちゃんだった。
この二人友達だったのか。
「一希ちゃんじろうくんのことしってるのー?」
「じろちゃんのお兄ちゃんとお友達だからね」
そういえばさくらちゃんはよくボヌールに行ってるからいっくんとも知り合いか。
私の頭に一つ案が浮かんだ。
「…じろちゃん、一緒にあべかわやに来る?」
迎えとかあるなら別だけど、西川家のことだ、いっくんに連絡しとけばきっと大丈夫。
ちょっと悩んで(だと私は思った)無表情で頷いたじろちゃんも連れて幼稚園を出発。
ちびっ子の可愛さに和んでいたけど、問題が発生した。
右にじろちゃん、左にさくらちゃん。
二人が手を繋ごうとしてくれるのはすごく嬉しい。
だけど私の左手には傘が握られている。
手を繋ぐか、傘をさすか。
究極の二択を迫られていたその時。
「一希ちゃん虹だよー!!」
さくらちゃんの言うとおり雨は止んで虹がかかっていた。
私のお迎え。