図書館連載

□At Valentine's Day
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「来月末で鳥羽館長代理更迭されるらしいわよ」

「え、そうなの」

「小牧二正の一件の責任取るんでしょ?」


年度末である三月末まで待つのは司令の温情らしい。
しかし館長代理の話もそこそこに、二人の会話は最近自分達に打ち解けてくれた毬江ちゃんに感するものへと変わっていた。


「『今月は勝負なのでガンバリます…!』とか言ってたけど、陸君誕生日とかあるの?」


それは違うと郁に言おうと僕が口を開く前に柴崎が口を出す。


「バーカ、今何月よ?」

「えっ…あっ」


そう、バレンタインだ。



****



今日から内勤ということで、郁を置いて少し早めに庁舎へ向かう。
寮から出た瞬間、冷たい空気が突き刺さる。


「バレンタインか…」


特殊部隊の面々には義理で渡すが、大人数なので買うよりも作るほうが安上がりだろう。
となると一度陸の部屋に押しかけて作るしかない。


「おはよう前橋さん」

「…おはようございます小牧二正」

何を作ろうかとか考え込んでいて、小牧二正が近づいてきたのに気付かなかった。


「今日から内勤だね、久々だけど大丈夫そう?」

「不安なとこがあるんでちょっと早めに来ました」


そっか、偉い偉い、と頭を撫でられると、顔に僅かながら熱が集まる。
幸い小牧二正には悟られなかったみたいで、じゃあ何かわからないことあったら呼んで、と言って別の部屋へ向かっていた。



****



「姉ちゃんが作ってんのって小牧さん用?」

「特殊部隊の皆用。
堂上班には生チョコ作るつもり。
ほら陸、味見。」


横に立っている陸の口に出来立てのトリュフチョコを放り込む。
幸せそうな表情からして、上手く出来たようだ。


「これ旨…!!小牧さんも二人と一緒なの?」

「そうだけど」

「ふーん…」

納得してない表情だったが、チョコをもう一つ摘んで陸は炬燵へ戻っていった。

「…なんだったんだろ、今の」



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