図書館連載

□In the fight
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週刊新世相に違法な記事が載るという。

それは昨年世間を騒がせた高校生による連続通り魔殺人事件の少年の栽培中の供述調書の全文及び顔写真、実名の公開をしたもの。
検閲は勿論、図書館が違法な記事を閲覧者にどう提供するかも問題となる。


「なんか…裏切られたような感じ。」


呟いた郁に、堂上二正が拳骨をくらわす。


「向こうにはジャーナリズムとしての言い分もあるし、何より個人は個人、組織は組織だ。短絡して人となりまで決めつけるなよ。」


そう、今自分達が考えるべきなのは、恣意を交えずどんな本でも全力で守ること。


****


そして問題の新世相の発売日、ご飯を三杯かき込む郁を横目に、何時も通り食事をする。


「柴崎、行ってきます。」


いってらっしゃいと微笑む彼女に見送られながら郁の後を追う。


「今日は十中八九配送中の襲撃になる。火器を使わん分肉弾戦になるぞ。一冊たりとも敵に渡すな!図書特殊部隊出動!!」


****


「来たぞ、守れ―――!!」


図書館の目の前で良化機関が攻めてきた。足の速い郁に図書を渡して応戦の体勢に入る。

すると小さいので狙い目だと思ったのか、三人が一気に襲ってきた。
そうなると不利な訳で、取り敢えず敵を引きつけながら攻撃を交わすので精一杯。

このまま交わし続ければ、と思っていたら、ドンッという音と笠原、という堂上二正の声に気をとられた。


「…っ、」


拳が脇腹に入る。声には出さないが結構痛い。
痛みに気を取られていたら、拳が頭に向かっているのに気づいた次の瞬間に地面に倒れ込んでいた。
早く立たないとやられる一方だけど、体は動かない。襲ってくる痛みを覚悟した。


「女の子相手に三人掛かりはどうかと思うけど?」

「大丈夫か朔。」

「…伊達に鍛えられてないからね。」


笑顔で拳を掴んでいる小牧二正と、一人を押さえてる光。見かねて助けてくれたんだろう。
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