図書館連載

□On the homepage
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久し振りの非番の日、僕は電車に乗って陸の家まで来ていた。
今日は寮でダラダラ過ごすつもりだったけど、一昨日陸から聞きたいことがあると言われたのだ。

最寄り駅で下車し歩いていると、携帯が着信を告げる。
つい相手を確認せず出たが、声が聞こえた瞬間後悔した。


『ヤッホー前橋ちゃん、元気?』

「貴方からの電話がなければ心身共に良好でしたよ里崎先輩」


この憎まれ口は定型句みたいなものだから、彼も笑って軽く流す。


「で、何の用ですか?暇つぶしとか言ったら切りますよ」

『そんなんじゃないって!!…前橋ちゃんさ、図書館のホームページ見たことある?』


あるかないかと聞かれればあるが、ここ最近開いた記憶がない。
素直にその旨を伝えると、あぁそうという返事が聞こえた。


『じゃあさ、今日あたりちょっと覗いてみなよ、面白いことになってっから』


まぁ図書館からしたら面白くないだろうけど、とカラカラ笑う先輩に一方的に別れを告げて切る。

丁度いいから陸の部屋で見せて貰おう。



****



「姉ちゃん、結構最近アップされ始めたコンテンツのこと知ってる?」

「いや、最近図書館のホームページはご無沙汰してて」


そう陸に言うとそっか、と少し残念そうな顔をして見せるからちょっと待って、とノートパソコンを持って来た。


「えっと…あぁコレだ、ほら」


僕の方に向けられた画面を覗き込むと、図書館のホームページには似つかわしくない黒を基調としたもの。
こんなコンテンツは記憶にない。
何より気になるのがタイトルだ。

『図書館員の一刀両断レビュー』

と銘打って、本の書誌情報に書影、コメントがついている。


「コメントは後で読んでよ、今はこれ見て」


スクロールした画面に映し出されたのは『レインツリーの国』の書影。小牧二正がトラブルに巻き込まれた原因であるが、思い入れのある本でもある。

しかしそこに綴られているコメントは、薄っぺらいだのお涙頂戴を狙う思惑が鼻につくだの買う価値は全くないだの言いたい放題の酷いもの。
一読したところで思わず眉間に皺が寄った。


「…毬江がさ、これ読んでから落ち込んでんだ」

「…ごめん」


自分の事は言わない陸だが、彼も嫌な思いはしたに違いない。
僕が謝る筋合いじゃないが謝らずにはいられなかった。


「今日帰って堂上二正とか小牧二正に聞いてみるよ、とりあえずあんたは毬江ちゃん慰めること!!」

「言われなくても行くっつの」

「ならいいや、じゃあそろそろ帰るね」


腰を上げるとおぅまたな、と出掛ける支度を始めた陸。
きっと毬江ちゃんのところに行くのだろう。





電話とレビュー
里崎先輩の言ってたのこういうことか、


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