楓並木
□短め台詞で10のお題:6〜10
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6:…一人で行くんだ…
日曜の朝。
昼近くになってようやく目を開いた流川が見たのは、一人で食事を取る花道の姿だった。
「どあほ……」
まだ完全には目覚めていない頭ながらも、流川は奇妙だと感じた。
いつもの花道は、起きるのが遅い流川を放って一人で食事をしたりしない。
二人分の食事を作り、流川を起こしてくれるのだ。
「俺、今日ちょっと出かけるから。」
目を見ずに花道が言う。
家を出る支度をしろ、ということなのか。
「俺もついてく。」
せっかくの休日、一緒にいられると思っていた流川は軽く傷ついた。
「ごめん………一人で行くんだ…」
どこに、とは聞けなかった。
花道の目が、見たことのないほど寂しい色をしているのに気付いたから。
流川は無言で着替え、
「家に戻るついでに途中まで送る…」
と呟いた。
花道はそれに黙って頷いた。