楓並木
□LISTEN TO MY HEART_BEAT
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そんなことは、とっくに気が付いていた。
この左胸の鼓動がなによりも切実にそれを教えるから。
最初の衝撃は何の前触れもなく訪れた。
その日、部活終了後の居残り練習。
最初に惨敗して以来、花道は週に1度ぐらいのペースで流川に1on1を挑んでいた。
まだ、花道はシュートを入れたことはない。
それどころか、ボールを保持することさえままならないという状況が長かった。
最初は悔しいという一念で挑んでいたが、近頃はそれ以外の感情が芽生えてきた。
楽しい。
お互いに全力で奪い合う、その緊張感。
雑念が消え失せ、互いに目の前の相手と戦うことだけが全ての、クリアな時間。
そして、少しずつだが確実に自分が上達しているのがわかる。
それが堪らなく楽しかった。