‡Terra‡
□父親
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日に日に無邪気さ無くしていくソルジャー・シン。
あの屈託の無い笑顔が消えて幾時になるのだろうか……
ナスカで沢山の若い血が流れ、そしてソルジャー・シンの心の支えであったソルジャー・ブルーもこの世を去った。
その事実が未だに若いソルジャーに酷くのし掛かっている。
私達の様に長く生きているわけでもない。
急にソルジャーになれと言われ、その力の強さ故に苦しんだ少年。
ソルジャー・ブルー……私にはソルジャー・シンを助けるだけの技量はあるのでしょうか……
§父親§
「グラン・パ!!」
「トォニィか……よくやった。お疲れ」
戦闘から戻ったトォニィがソルジャー・シンへ駆け寄った。
トォニィにはどうも私は嫌われているらしい……と言うよりもかなり嫉妬されているな。
ソルジャー・シンに労いの言葉をかけられればトォニィは年相応に笑顔を浮かべる。
いつから我々は彼等に恐怖を抱くようになったのだろう。
彼等は愛すべき我がミュウの子。
そして守らなければならない子供だと言うのに……
これでは人間となにも変わらないではないか。
思念波にのせて皆の子供達への恐怖が届く。
そして、ソルジャーへの不信感も。
「ハーレイ、僕は一旦下がる。何かあったら呼んでくれ。トォニィ……」
「解ったよ、グラン・パ!」
マントを優雅に翻し、艦橋からトォニィを引き連れて姿を消されたソルジャー……
俯かず、一人で苦しみに耐えておられるあの方の心の拠り所は恐らく子供達と、ソルジャー・ブルーの名残だけなのだろう。
つい深くため息を吐く。
彼は健気に我々との約束を果たそうとしてくれている。
その約束も、決して合意の上の事ではないというのに。
我々が勝手に約束させたことだというのに。
最も愛する子供達を危険に晒す苦しみ。
それを堪えて心で涙を流しながら立ち続ける年若いソルジャー……
我々年寄りは上から文句を言うだけで完全にソルジャーに頼りきっている。
その事実を己に突きつければ更た溜め息がまた一つ溢れる。
『ハーレイ……来てくれないか?』
思念波に乗せて、ソルジャーの声が届いた。
ソルジャーにしては珍しく弱々しい思念波……
嫌な予感がした。
「すまない、ブリッジを任せる。何かあればすぐに知らせろ。」