リクエスト 3

□鳶に油揚げ
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銀魂高校3年z組出席番号12番の土方十四郎は、最近悩んでいた。
別に成績が悪いとか、苛められているとか、そんな事ではない。
それどころか、成績は上位で、苛められるどころか、やられたら倍にしてやり返す性格なので、そんなものとは無縁だ。
3年に上がるまではそれなりに、幼馴染み達に囲まれて楽しい学園生活を送っていた。
土方の生活が一変したのは、3年に上がり新しいクラスになってからだ。
担任がやる気のないまるで死んだ魚のような眼をした、天パのなぜか銀髪の男・坂田銀八になり、そしてそのクラスになぜか片目に眼帯をした、噂ではその眼帯を外した眼に睨まれると相手が石化すると言われる目付きの悪い男・高杉晋作が転校してきてから、土方のハッピー学園ライフは終わりを告げた。

「多串くん。なに怖い顔してんの?」
「多串じゃありません、土方です」
「難しい顔してっと、飯がまずくなるぜ」
「人のウインナー、持っていくな」

ここは屋上だ。
なにが悲しくて、男3人顔を付き合わせてこんなところで弁当を突いているのか。
土方はほぉっと気づかれないように、嘆息を落とした。
何度言っても自分の名前を覚えない担任と、隙あらば自分の弁当を横から掻っ攫おうとする転校生に挟まれて、土方は泣きたくなった。
今まではお昼だって、幼馴染みの近藤や沖田たちと共に和気藹々食べていたのに、何でこんな事になってしまったんだろう?
土方は、もそもそと箸を動かす。

「高杉!多串くんにくっつきすぎなんだよ!!もっと離れろ!!!」
「そういうオメェこそ、教師のくせになに生徒に手ぇ出してんだ!!!」
「手ぇなんか、まだ出してねぇもん!!」
「まだってどういう意味だよ!?てか、もんとか言うんじゃねぇ!!!」

 まただ・・・。

本人を全く無視して、いきなり口喧嘩を始める二人に、土方は思わず頭痛を覚える。
間に挟まっている自分の存在は、彼らの中から消えているのだろうか?
早く教室に帰ろう。一人黙々と、弁当を詰め込む土方だった。
しかしこれは、昼休みに限った話ではない、
この二人はいつだって、土方を取り合い反目しているのだ。
土方の意思は、そこには全く介在されていない。
この二人がいつでも付き纏うので、今までの友人達は自然と近寄ってこなくなった。
はっきり言って、迷惑に他ならない。
幼馴染みの近藤や沖田はそれにもめげず、仲良くしてくれているのが救いだ。
何度も告白してくる彼らに、その都度自分にその気はない、と言っても、二人は頑として聞いてくれない。
一層のこと、どちらかを選べば諦めるだろうか?
しかしその後のことが容易に想像できて、とてもできそうにない。
殺人事件の原因には、まだなりたくないのだ。しかも同性愛の痴情の縺れなど、親に顔向けができないではないか。

「ごちそうさまでした」

一人黙々と食べていた土方は早々に食べ終わり、弁当箱を片付け始める。
その声に二人は揃って喧嘩を止め、立ち上がろうとした土方の肩を、ガシっと押さえた。

「「食べ終わるまで、ここにいろ」」

何故、こんなところばかりこの二人は息が合うのだろうか?
もう逆らうのも面倒になって、土方は二人がまたもや喧々囂々しながら食べる終わるのを、じっと待ち続けるのだった。



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