リクエスト 3

□その名は…、破滅 2
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真選組副長の土方十四郎と過激派テロリストである高杉晋助が初めて出会ったのは、攘夷戦争ももう終盤を迎えた頃だった。
その頃土方まだ武州の田舎に住んでおり、近所で近藤が開いていた道場(まだ道場主ではなかったが)に通い、そこで剣術の稽古に勤しんでいたのだ。
攘夷戦争には、興味は全くなかった。
そんな時だ。稽古の帰り、家に辿り着く前に大怪我をした男が、やはり怪我をして意識を失っている男を抱えて土方の目の前に現れたのは・・・。
彼を頼む、そう言い置いてその男は、土方の目の前で絶命した。
そして土方の腕に残された男。その男の顔半分は深紅に染まり、既に意識は飛んでいた。
そんな男を、よもや放って帰るわけにはいかない。頼んだ相手は亡くなったのだ。
それを無視するのは、気が引けた。
仕方がないので、そのまま男を引き摺って家に帰る。
土方家の敷地は広く、使われていない蔵がいくつかあったので、その中に彼を匿った。
血を拭い、怪我の手当てをしてやる。土方家は豪農で薬の行商などもしていたから、そこそこの知識はあった。
刀傷であろうか?傷の深さから見て、恐らくこの瞳が光を捉えることはもうないだろう。
丁寧に手当てを施す。
自分とほとんど年齢のかわらないであろう、その男。
戦争には興味はなかったが、目の前にいる男には俄然興味が湧いた。
男が目を覚ましたのは、翌日のことだ。
そこで初めて彼の名と、彼が鬼兵隊という興味のない土方でも聞いたことのある、攘夷志士の中でも有名な集団の総督だと知ることになる。
尋ねられ、彼を連れてきた志士の死亡を告げると、彼は一言そうか、と吐き出した息と共にそうぽそりと漏らした。
それからも土方は、家の者には内緒で彼の看病をし続けたのだ。
そしていつからであろうか?もうどちらからかも分からぬほどに、彼らは急激に惹かれ合い、体さえも重ねる様になっていた。
いや。土方は目覚めた高杉を見た瞬間、もう既に彼に惹かれていた。それは本人でさえ止めることができぬほど、激しく・・・。
しかし、その蜜月もそう長くは続かなかった。
戦争はまだ終わっていない。
高杉の鬼兵隊は、彼を残して全滅した。あの男が高杉だけを逃がしたのだ。
それを知った高杉は、見の内に黒い獣を飼うようになった。
凶暴で獰猛なソレ・・・。
だが土方にとっては、それさえも愛しかったのだ。
そして高杉は、再び戦争に身を投じ、それでもちょくちょくと土方の元に通ってくるようになった。
たまにしか会えない、愛する男。
僅かな時間に、彼らは激しく愛し合った。
そうして、攘夷戦争は攘夷志士の多くの屍を築き、終結する。
高杉はそのまま、地下に潜り抵抗活動を続けた。



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