リクエスト 3

□傲岸不遜な姫君
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その日、珍しく銀時は朝から仕事に勤しんでいた。
近所の家の扉の調子が悪いから直してくれ、というどおってことのない依頼だ。
簡単な依頼だったので、勿論銀時だけで出掛けた。
そこに突然やってきたのだ。彼の姫君が・・・。

「どうしたの?多串くん。こんなとこに・・・」

後ろから思っても見なかった声に名を呼ばれて振り返り、そこにいるはずのない恋人の姿を認めて銀時は目を瞠る。
ここは歌舞伎町でも、長屋などが立ち並ぶ雑多とした下町だ。
普段真選組の巡回のルートからは、外れているだろう。
いや、そもそも彼は着ているのは、私服の着流しだ。ということは、今日は非番なのだろうか?
何故、非番の彼がここにいるのかわからないくて、銀時は首を捻った。

「オメェんとこに行ったら、チャイナがここだって教えてくれたんだよ。オイ、今から弁当作れ」
「・・・・・、ハァァァァ?!」

突然脈絡のない事を言い出す目の前の恋人に、銀時は素っ頓狂な声を張り上げた。
何故いきなり弁当なのだ?と、言うか、今自分が何をしているのか、彼は理解していないのだろうか?
しかし、その銀時の叫び声に、土方の開き気味の瞳孔は一気に全開した。

「弁当作れって言ってんだよ」
「あ、あのぅ・・・。俺さ、仕事中なんだけど・・・」

言っても無駄だと思いながらも、一応自己主張してみる。
するとやはりギロリと睨まれ、銀時は思わず首を竦めた。

「俺が作れ、っつったら作れ!!仕事なんざ10分で終わらせろ!!!」

この姫君は、言い出したら聞かない。
とにもかくにも、天上天下唯我独尊な男なのだ。ヘタに逆らうと、後が怖い。
結局この後、銀時は死ぬ気で仕事を終わらせて、土方と共に弁当の材料をしこたま買い込み(勿論会計は土方持ちだ)、万事屋へと帰宅したのだ。



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