リクエスト 3

□H 2  R18
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自分を置いて一人立ち去る銀八の背中を、土方はじっと見詰めた。
それが視界から消えるまで、土方は視線を逸らす事はしない。
坂田銀時のことは、知っていた。
土方にとっては、歌舞伎町でも有名なホストであり、誰にも靡くことのない彼は憧れだった。
土方は、雁字搦めだ。もうどこにも自由なんてない。
だからこそ、彼の自由な生き様が羨ましかったのだ。
そんな彼から声を掛けられた時、土方は我を疑った。
彼が土方の存在などに、気が付いているとは思ってみていなかったから・・・。
胸が高鳴った。彼に少しでも近づきたかった。
だから、彼を誘ったのだ。生まれて初めて、自分の意思で・・・。
土方は今まで、自分から肉体関係を迫ったことはない。
むしろ抱かれることは、大嫌いだった。
己の体に他人の体温が触れるだけで、本当は虫唾が走る。
しかしこうやって体を売って稼がないと、彼ら暴力団になにをされるかわからないという恐怖がいつも土方を
縛り付けているのだ。
銀時は先程土方に、甘えていると言い放った。
土方はこれまでに、甘えたことなどない。
甘やかしてくれる存在など、いはしないのだ。
本当は、学校にだって行きたかった。他の子供のように、学校に行って勉強して、部活をして、友達と一緒に馬鹿な話をして笑ったり、遊んだりもしてみたかった。
だが、それらはまるでガラスケースの向こうにある世界のように、土方には触れることさえできない。
自分だけがそのガラスケースの外で、何も出来ずにただ一人ぼっちで立ち尽くすことしかできないのだ。
憧れだった彼に、投げつけられた言葉たち。それは鋭いナイフのように、土方の胸を刺し貫いた。
胸が痛い・・・。
でもそれを癒す術は、何一つありはしない。

「オイ。客つかねぇなら、その分俺達の相手しろよ」

銀時の後姿を見続ける土方に、男は喉を鳴らしながら彼の腕を掴む。
その目は既に、獰猛なまでの情欲を孕んでいた。
もう0時も過ぎた。今日は恐らくこのまま、客を捕まえることなど出来ないだろう。
毎日体を売って作った金の大半は、彼らに父親が作った借金の返済という名目で取り上げられる。
残った金も父親に取られ、結局土方の手元に残る事はほとんどなかった。
客が取れなければ彼らに返済をする事もできず、まともに食事を取る事も出来ないのだ。
だから、そういう日には、客の代わりに彼らに抱かれる。
土方にとっては客が取れても取れなくても、どちらにしても体を売ることになるというわけだ。
それは毎日、毎日続けられる。まるで無間地獄のように・・・。
もう溜息を吐く事も出来ず、土方は銀時の面影を振り切って男の後ろについて歩き始める。



所詮、自分に救いなど、もたらされることはないのだ――――



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