リクエスト 3

□綴られる言葉
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夏。当然のことながら暑い。
あまりの暑さに、体が蕩けそうなほどだ。
このクソ暑いのに、真面目に仕事なんかしてられっか!!
と、恋人は大声で叫んで、今回このようなことになったのだ。





土方十四郎は銀魂高校の3年生だ。
今は夏休み。
あまりの暑さにぶち切れた恋人―――同じ高校の現国教師にして担任である坂田銀八に連れられて、一泊でここに来ていた。
目の前に広がるのは、紺碧の、とまではいえないが、一応大海原。
温泉地でもあるここの旅館に予約を入れ、恋人という関係になってから始めての泊りがけの旅行で、いつもは意地っ張りな土方も嬉しさを滲ませていた。
そう、二人っきりのはずだったのだ・・・。

「なんでィ、土方さん。えらく不景気な面してんじゃねぇですかィ」

 うっせィ!!誰のせいだ!!!

心中で罵詈雑言を繰り返しながらも、ブス〜っとレンタルしたパラソルの下で、土方は膝を抱えて缶ジュースを片手に無言のまま座り込んでいた。
話し掛けてきたのは、幼馴染みでありクラスメートでもある沖田総悟だ。
沖田だけではない。
土方の前には、同じく幼馴染みである近藤勲、そして他にも志村姉弟、神楽、山崎、猿飛、桂などといったクラスメートがなぜか、雁首を揃えていた。

 一体、どこで聞きつけてきやがったんだ?!

リーク元は土方の母なのだが、そんなことは土方の与り知るところではなかった。
せっかく初めての、恋人とのお泊まり旅行なのに・・・。
しかも目の前には、女生徒に腕を取られ鼻を伸ばしている恋人がいる。
その女生徒、猿飛は土方から見てもナイスバディで、以前より銀八に気があるという噂付きだ。
実際、今日も今日とて、かなり際どい水着を着て、土方の目の前で先程から熱烈なまでのアプローチをかけている。(ように土方には見える)

 あんにゃろ〜!だらしねぇ顔しやがって・・・!!

怒りに無意識に拳を握り締めると、いやな音がして缶がひしゃげて中身が溢れてきた。
それが羽織っていたパーカーに掛かる。
あーあ、と沖田が声を漏らした。

「何やってんですかィ。どんくせぃな」
「やかましわァァァ!!!」

それでなくても暑くてイライラしている上に、目の前の恋人はムカつくは、パーカーは汚れるは、で、いいことなしだ。
こんなことなら、家にいればよかった。と土方は泣きたくなった。
バット立ち上がり、着ていたパーカーを脱ぎ捨てる。
沖田はそれをニヤニヤと眺めていた。
この幼馴染みは、妙に聡い。もしかすると、今の自分の心情さえバレているのかもしれない、と土方は嫌な汗を掻いた。

「ネチャネチャして気持ちわりぃから、流してくる」

持っていた缶はペプシのものだ。炭酸特有の粘つきが、あまりにも不快だった。
そう言ったかと思うと、そのまますたすたと海に向かう。
せっかく来たのだ。目の前に海があるのに入らなければ、一体何しに来たのかわからない。
途中、近藤や山崎に声を掛けられたが、それにジュースを零したんだ、と断って海に入った。



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