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□きもの:佳菜さまより

僕は壊したいぐらい君を―・・・
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僕は壊したいぐらい君を―・・・




『総司♪』
「あ、あきちゃん。」
ある日の放課後。
僕とあきちゃんが付き合い始めて、早一ヶ月が経とうとしていた。
特に帰る約束をしていなかった僕らだが、##NAME1ちゃんの声によって我に返った。


「遅いよ。」
なんて僕が言えることじゃないけど、敢えて言ってみる。
すると案の定、

『ごめん・・・、遅くなっちゃった?』
と愛らしく笑う。
こんな風にされるのが、一番困るのだ。
試してみたくなる。
一体、どのくらい僕が好きなのか。
「ずっと待ってた。」
『・・・そっか、本当にごめん』
“待ってた”なんて嘘に決まってるのに。
しかも、僕は迎えに行こうともしなかった。
それなのに。
わざとやっているのだろうか・・・?
僕の中で、あきちゃんに対する愛しさがあふれる。
『な、なに』
「いや、別に」
『な、なんかある――!絶対』
僕の異変にいち早く気付いたあきちゃんは、声を上げる。
ここ、一応昇降口なんだけどなー、なんて思ったが、口には出さない。
周りの人達に僕たちが付き合ってる、ってアピールするのにもってこいの状況だからね。
あきそういうの、全力で拒否しそうだし。「君にはホント、参るよ」
小さく呟くと、君は頬を膨らませる。
そんなちょっとした表情に、僕の心が揺さぶられてる、なんて君には到底理解できないだろうね。
僕が君を壊したいぐらい好きだってことも――・・・
「ほら、行くよ。」
手を引き歩き始めると、最初こそ僕が一方的に握っているのだが、次第に強く握り始める。
(あ、僕の手、握ってくれた。)
そんな小さいことに、僕の頬は綻んだ。
最近の僕はどうかしてるな。
あきちゃん、君のせいで。
ちょっと悪戯がしたくなった僕は、手を一旦離し、よく言う“恋人つなぎ”にしてあげた。
すると、俯きがちに、
『もう。』
と言った。
(照れ隠し。)
なんてことは言わない。
今日のあきちゃんは一段と可愛いから。
みんなに自慢する機会なんて滅多にないから、今日だけは特別、
皆に見せつけてやる。
でも、抵抗しない君は、僕のことが好きなのかな?
自意識過剰かもしれないけど、僕はそれぐらい君が好きだよ。
愛してる。
あきちゃん――・・・



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