薔×薇

□fall in...
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『fall in...』


最近、アイツの笑顔に一喜一憂している俺がいる。
俺が仲間に入ったばかりの時は、俺の料理を食ってもアイツは特に何も言わなかった。
表情も変えないし、昼寝のし過ぎで遅れて食いに来ることも多々ある。
それでも嫌な気分にならないのは、アイツが綺麗に食ってくれて、必ず手を合わせてくれるから。

そんなアイツが、最近『美味い』とこぼし、笑うようになった。
俺に向かって言っているというよりは、呟くように。
…実際には最近じゃないのかもしれない。
前はアイツに注目なんてしていなかったから、気付かなかっただけなのかも…。

あの笑顔を見ると、妙に嬉しい。
料理人としてではなく、一人の人間として、アイツが笑ってくれると何だか嬉しくて、気付けばアイツを目で追っている最近の俺です。

そうなってからまた新たな発見があって、アイツって意外と起きてる。
ホントに一日中寝てるか鍛練してるだけかと思ってたけど、意外とルフィ達とバカ笑いしていたりする。

「だーっはっはっは!!」

ほら、今日も…。
俺以外に見せるアイツの笑顔を素直に喜べないあたり、俺も相当きてるな…。

ガクッ

「!?」

どすん…!

蜜柑畑に水をやっていた俺は、足を踏み外して下に落ちてしまった。

「いってえ…。」
「なーっはっはっは!!だっせえサンジ!!」
「だっせえ!!」
「うるせえよ…。」

アホ集団に笑われた。
起き上がると、ゾロと目が合う。

「何よそ見してんだよ。」
「…!……う、うるせえよ!」

あ……。

今、すげえ寂しそうに笑った…。

俺の知らなかったゾロの顔を見る度に、もっとアイツのことを知りたくなる。
自分の気持ちを確かめる為にも、アイツと話さなければならないと思った。

その機会は案外早く訪れ、みんなが寝静まった深夜、俺は船番をするアイツの元に向かった。

「マーリモ。」

見張り台を覗くと、体を小さく丸めて海を見ていたアイツが俺の方を向いた。
少し驚いた顔をした後、また…。

「どうした?」

寂しそうに笑った。

「話があってな。」
「話?」

不思議そうに俺を見つめるアイツの前に、膝を立てて座った。

「ゾロ。」

名前を呼ぶと、ピクリと疼いた。

「好きだ…。」
「えっ…。」
「好きなんだ…。だ……ッ!」

『抱かせてくれ』って言うつもりだった。
でも、ランプの明かりに照らされたアイツが、今にも泣きそうな顔をしていて思わず抱き締めていた。

…抱けねえ……!!

俺、本気みてえ…。
大事にしてやりたいと思った。
ゾロが俺を求めてきたら、優しく抱いてやろうと思った。
俺の背中に恐る恐る回された腕に、その想いは増していく。
結局キスもせず、想いを伝えただけで夜は更けていった。



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