薔×薇
□笑う月の下で
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『笑う月の下で』
すっかり夜も更けた午後11時。
船の甲板に男が二人。
一人は煙草を吸い、一人は酒を飲んでいる。
「もうすぐだなー。」
「何が?」
サンジの言葉に、ゾロは声だけで応えた。
「…誕生日。」
「誰の?」
酒をグビッと飲んで聞いたゾロを、サンジはまじまじと見つめた。
「…何だよ。」
視線に気づいたゾロはその方を見た。
サンジに顔を見つめられるのに、最近やっと慣れてきた。
二人きりになると、サンジはよくゾロの顔を見つめる。
飽きもせずに、ジッと。
以前はこれが苦手で、それだけで心拍数が上がっていた。
* * * * * * * * * *
「じろじろ見んな…。」
「駄目?」
「駄目って……ッ!」
首筋に触れたサンジの手に体が震える。
「怖い?」
「…ッ……。」
* * * * * * * * * *
確かアレが最初だった…。
なんてことをゾロは思い出していたが、
目の前のサンジは怪訝そうな表情で、あの時と全く違う。
「だから何だよ。誰だよ。」
「お前それ本気か?」
「は?」
「本気と書いてマジか?」
「何言ってんだ、てめえ…ぁ。」
訳がわからないと目をふせたゾロだったが、
何かを思い出して目を開けた。
「…俺だ。」
ぼそりと、ゾロは答えを導き出した。
「だからそれ本気?」
「うるせえよ…。」
赤い顔を隠すように、ゾロは酒を飲み干した。
「何か欲しいもんあるか?」
「別に、無ェ。」
「俺はある。」
サンジの煙草は灰皿へと消えた。
バッ!!
「!?」
クソ真面目な顔で、サンジはゾロに向かって両手を広げた。
「何…?」
「だっこ。」
「は?」
「だっこ。してやりたい。」
「はあっ!?」
飛び込めと言わんばかりに広げられた両手は、
なかなか動かないゾロにもどかしそうである。
「ほらっ。」
「いい!」
ゾロは、サンジとは逆方向に体を向け、それを拒んだ。
しかし、サンジがそれを許す筈が無い。
「だっこしてやるって!!」
ガバァッ!
「どわあ!!」
ゾロは強引に引き寄せられ、サンジの腕に収まった。
そうなったらなったでゾロも大人しくなる。
「離せ…。」
その言葉が真意でないことなど、すぐにわかる。
「だっこだけじゃ足りねえ?」
どう出るか。
目を細めて聞いたサンジを一瞥してゾロは考えた。
……たまには素直になってやろうか。
―――コイツにも、自分にも。
そう思ったゾロは、無言で顎を上げ、目を閉じた。
Happy Birthday Dear Zoro!!
終。
最近の我が家のマリモ君は積極的な気がする…。
※諸事情により、タイトル変更。