薔×薇

□剣士の仕事
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お互い、よく生きてたな。


『剣士の仕事』


再会の喜びで長引いていた宴が終わり、
皆が寝静まる頃には夜中の3時を過ぎていた。
夜風がひんやりと俺の胸元に入ってくる。

俺は部屋に戻らず、甲板で海を眺めていた。
水面に映った月がゆらゆらと揺れる。

此処から眺める海…。
久し振りだな。
あの頃と見え方は変わっちまったけど。

「2年か…。」
「2年だな…。」
「!」

振り返るとサンジが立っていた。
髪は2年前よりも長く、髭も増えた。
しかし、何より分け目が変わったことが外見で最も大きな変化だろうか。

まあ…変わったのは外見だけだと思うが。

「船番が下降りてきて何だよ。」
「お前がいる気がして、な。」
「え…。」
「つーか、お前に呼ばれた気がして。」
歩きながら言ったサンジは、俺の目の前で歩みを止めた。
柔らかい微笑みにつられて俺も笑う。

「そんなことも、あったな。」
「覚えてた?」
「まあな。」

手をかけていた手すりから離れ、真っ直ぐにサンジと向き合った。
お互い片目だけど、しっかりと目が合う。

どちらからともなく、俺等は抱き締め合った。
サンジは腫れ物に触るかのように優しく、慎重に手を回してきた。

「ゾロ…。」

懐かしい声と、懐かしい匂い。
絞り出すように囁かれた声に、体が熱くなっていくのを感じた。

「ゾロ…ゾロ…。」

サンジが何度も俺の名前を呼ぶ。
その度に、俺を抱き締める腕にも力が入っていった。

「サンジ…。」
「ッ……ゾロ…ッ。クソ逢いたかった…!」

苦しくて、痛い程に抱き締められたが、
今はそれが再会を実感させた。

俺の頭を撫でる手が、何だかぎこちなく感じた。
震えてんのか…。
お前も、俺も。

サンジが腕を緩めて俺の顔を見つめた。
すっげえ近ェ…。
すっげえ久し振り…。

「ゾロ…。」
頬を撫でる手に自分の手を重ね、またあの夜を思い出す。
あの夜のように静かに受け入れたキスは、
あの夜よりも臆病だった。




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