薔×薇
□ラズベリー
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目が覚めた。
朝か…?
いや、違う…俺は寝ようと思って寝たんじゃねえ…。
『ラズベリー』
頭を横に動かすと、タオルが落ちてきた。
額に置かれていたみたいだ。
そう言えば薬品の臭いがする…。
そうか、此処医務室か…。
俺どうしたんだっけ…。
体を起こそうとして、足元の重みに気付く。
目をやると意外な姿。
「ゾロ…?………!!」
ベッドの隅で突っ伏して寝るマリモを見て思い出す。
そうだ…俺、コイツのバースデーケーキ仕込んでたんだ…!
* * * * * * * * * *
11月10日夜。
ディナーを済ませた静かなキッチンには、サンジの姿があった。
「今年は贅沢に3種類使ってやるかなっ。」
サンジの手には、鮮やかなベリーがいっぱいに入ったボウル。
甘く熟したブルーベリーに、少し酸味の効いた苺とラズベリー。
甘い品種を選ばなかったのは、クリームとの相性だけでなく、明日の主役の好みを考えてのことか。
「…ん?」
苺のヘタを取っていたサンジは、ボウルの中に一つだけ違う実が混ざっていることに気付く。
「何だこれ…どっかで見たことあるな…。」
カリッ
かじってみて更に気付く。
「あ……。」
食っちゃいけないものだって。
* * * * * * * * * *
あの後急いで口をゆすいだが…それからの記憶が無い。
毒のある実を何の躊躇もなく食うなんてな…。
情けねえ……………つーか今何時だ…!?
ガバッと体を起こすと、足元のゾロが動いた。
「ん……。」
「ゾロ!」
俺はゾロの体を揺すった。
間もなくしてゾロは目を開け、俺を見た。
「おい、ゾロ!俺どれくらい寝てた!?今何日だ!?」
捲し立てたが、ゾロは俺をジッと見て動かねえ。
「おい!!ゾ、ロ……っ。」
懲りずに聞く俺をゾロは抱き締めた。
上がった熱が、その腕の中で落ち着きを取り戻していく。
「ゾロ……?」
「まだ11日だ…。」
ぼそり、と返される。
「コックが何やってやがる…。」
「…悪ィ。」
ゾロの頭を撫でて顔を見ると、目が赤い。
「ゾロ、誕生日おめでとう。遅くなってごめん。」
「…よく間に合ったな。」
「何で上からだ。愛の力だクソ。」
「ウゼェ。」
そう言って笑うゾロにキスをした。
今からたっぷり寝かせてやらねえと。
………んなこと出来んのかな。
Happy Birthday Dear Zoro !!
終。
リハビリがてらのゾロ誕でごめんなさい…。