薔×薇

□お前が思うよりも強く
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『お前が思うよりも強く』


明日はサンジの誕生日だ。
たまには俺が飯でも作ってやらねえと…。
洗濯も明日はアイツが当番だけど俺が……。

トントントントン…

包丁がまな板を叩く音と、鼻をくすぐる良い匂いでゾロは目を覚ました。

「ん…。」

うっすらと目を開け、少しずつ光を取り込む。
なれてきたところで見えたのは、サンジがキッチンに立ついつもの後ろ姿。

今日の飯、何だろ…。

………。

「って違ーーーう!!」

現実に戻ったゾロは、勢いよく起き上がり、サンジの元へ駆け寄った。

「ぉ。起きたか。おはよ。」

鮭の焼き具合を見ながら、サンジは言った。

「ぉ、おはよう!じゃなくて、おおお前何やってんだよ!」
「は?何って…朝飯作ってるんだけど。」

鮭を見ていたサンジは、不思議そうにゾロを見た。

「おっ、俺がやる!」
「何でだよ?もう出来るぜ。」

軽く笑いながらサンジは答える。
焼き上がった鮭を皿に盛り、テーブルへと運ぶサンジ。
ゾロは慌ててその後を追う。

「だ、だってお前…今日誕生日じゃねえか!」
「まあ…確かにそうだけど、これは俺の仕事だし?」
「そ、そうだけど…。」

テキパキと朝食の準備をしながら、サンジは言う。
ゾロが一人で慌てて、サンジの後ろをついて回っている間に、気付けば朝食の品が出揃った。
今日は和食。

「さ、食おうぜ。」

サンジが柔らかく笑って席についた。
ゾロもそれに倣う。

「「いただきます!」」

各々食べ始め、暫くするとゾロが思い出したように口を開いた。

「サンジ。」
「ん?」
「誕生日おめでとう…。」

少し照れながら言うゾロの姿に、サンジは胸が熱くなるのを感じた。

「ありがとう…。」

微笑むと、嬉しそうに微笑い返してくれるのがたまらなく愛おしかった。

「昼飯は、俺が作るからな!」
「ああ、悪ィ。もう仕込んじまった。」
「は!?早っ!じゃ、じゃあ晩飯!な!」
「晩飯はハンバーグって決めてんの。」
「ええっ!?何でだよ!?」
「お前が好きだから。」
「えっ……。」

思わず動きが止まる。

そう言えば、朝飯も俺の好きなもんばっかり…。

「何でだよ…お前の誕生日なのに…。」

怪訝な顔で見つめるゾロとは裏腹に、サンジはしれっと答えた。

「だって俺、お前が喜んでる時が一番幸せだもん。」
「!」

サンジの言葉に、ゾロの胸が高鳴る。

「アホ…。」
「確かにアホかも。」

サンジは困ったように笑った。

「じゃあ、俺は何すればいいんだよ…?」

ゾロの方は、本当に困った顔で聞いた。
その問いを受け、サンジはゾロを見つめる。

「俺の傍にずっといてくれる?」

サンジの真っ直ぐな瞳に、ゾロはまた動けなくなる。

「当たり前だろ…。」

顔は赤いままだったが、ゾロも真っ直ぐサンジを見つめたまま答えた。
それが嬉しくて、溢れる幸せを噛み締めるようにサンジは目を閉じた。

「ありがとう…。」


食後、テレビを見ながら寛ぐサンジに、ゾロが小さな袋を渡した。
中身はライターだった。
蓋を開けると、キン、と音がする。

「お前が選んでくれたの?」
「他に誰がいんだよ…。」
「すげえ嬉しい…!」

素直に喜んでくれるサンジを見てゾロは胸を撫で下ろした。
貰ったライターを嬉しそうに眺めるサンジの前に、ゾロは腰を下ろした。

「どうし…た……っ。」

ゾロは後ろに体を倒し、サンジの胸に収まった。

「…俺も嬉しい。」

前を見たまま言うゾロ。
顔を見せないのがまたくすぐったくて。
ライターを握りしめたまま、サンジはゾロを抱きしめた。

お互いの体温が心地好くてうたた寝を始める二人を、春の日差しが優しく包み込んだ。


Happy Birthday Dear SANJI !!


終。



平和なバカップルに仕上がりました(´^ω^`)


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