薔×薇

□dessert time
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「Zzz…。」

腹巻き姿の剣豪が、気持ち良さそうに寝息をたてるのは、その船が平和である証拠の一つ。
そのうち…ほら、こんな声も聞こえてくる。


『dessert time』


「サンジーっ!おやつー!」

麦わらの船長さんは、今日もコックにおやつのおねだり。
彼の底知れぬ胃袋を飽きさせない腕を持つコック。
更に闘ったらこれが強いのだから、さすが「サンジ」とでも言うべきだろうか。

「ちょっと待ってろ!今持ってく。」
「イェーッ!おやつっ♪おやつっ♪」

クルー達の大合唱が始まったが、剣豪は起きない。
まぁ、いつものことかもしれない。

「ほれよ。」
「ひゃっほーい!」

サンジが持ってきたアップルパイにがっつくクルー。

「マリモは?」

その「マリモ」の分のアップルパイ片手にサンジが聞く。

「んあー?ゾロならどっかその辺で寝てんじゃねぇか?」

口の端にパイの欠片を付けたウソップが答える。
…彼の鼻は元々こうなのか?伸びたのか?←

「愚問だな…。」

壁に寄りかかって昼寝するゾロ。
サンジが目の前に立っても起きないのは、爆睡してるのか意地なのか最早わからない。

「食うか?」
「食う。」

最短の会話を済ますと、ゾロにパイが渡される。
ガツガツと食べ始める。
船長も早食いだが、ゾロも早い。

「(こいつホント不味そうに食うよな。)」

そんなことを思いながら、サンジはゾロの前に腰を下ろした。

「…何だよ?」

不思議に思ったゾロが少し眉を潜めて聞く。
パイはもう殆ど食べてしまっている。

「いや…いいなぁ、と思って。」
「は?」

ゾロの目を真っ直ぐ見ながらサンジは続けた。

「デザート。俺も食いてぇと思って。」
「?食えばいいじゃねぇかよ。お前ならすぐ作れるだろ?」
「そういう問題じゃねぇんだよ!」

サンジの声が急に荒くなった。

「お前世界の食料事情全くわかってねぇな!?
小麦粉がねぇんだよ!小麦粉!つーか、バターも少ないわけ!」
「…ふーん。」

一方的に言われたゾロは、ポカンとした顔。
しかし、サンジの言葉を思い出して、サンジの顔と残り少ないアップルパイを交互に見る。

「(…ったく。言った俺も馬鹿だった。)」

サンジは項垂れている。

「これ。」
「あ?」
「少ねぇけど食うか?」

少しだけ上目遣いに言うゾロ。

「甘いもん、食いたいんだろ?」

その言葉に、サンジの目が妖しく笑った。

「いいのか?」

彼の変化に気付かないゾロは、コックリ頷く。

「じゃあ御言葉に甘えて。」

するとサンジはゾロの右手を取り、バターで少しベトついた指をくわえ込んだ。
ゾロの一瞬の震えが、指を通してサンジの舌に伝わる。

「んなっ…何しやがるてめぇ!!」

サンジはバターを綺麗に舐め終わると、指を解放し、そのままゾロの右手首を掴む。
それを壁に固定して顔を近付ける。
ゾロの熱が耳まで伝わっている。

「大人しくしてろ。デザートは静かに楽しむもんなんだよ…。」

サンジはそう言いながらゾロの左耳をなぞり、滑るようにして顎に手を添えた。

「てめっ…。」

何か言おうとしたゾロの口が塞がれた。




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