薔×薇

□息
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たまには、こんな日も良いだろう。


『息』


「ふー、終わった。」

翌日の仕込みを終えたサンジは、一息ついて宙を仰いだ。
吐き出されたそれは、冷たい空気に冷やされて白く浮かぶ。
視界に入った時計を見ると、午前0時を過ぎていた。

「日ぃ跨いじまったなあ。」

若干口角の上がった口で煙草をくわえる。
吐き出した煙は、先程の息よりも白く、長く宙を漂っていた。
その煙を切るように、ドアに向かうサンジ。
ドアを開けた先に待っていたのは、漆黒の空でも、輝く星でも無かった。


「ゾロ…見張りサボって何やってんだお前。」

突っ立っているゾロ。
サンジと目が合うと、軽く俯いて目を反らす。
顔が赤く見えるのは、寒さのせいだけだろうか。

「……おめでとう。」

暫くの沈黙の後に発せられた言葉。

「…は?」

突然のことで…というか意外過ぎて、サンジは思わず聞き返してしまう。

「だからー!誕生日おめでとうっつってんだよ!!」
その言葉と、更に顔を赤くするゾロの姿に、サンジは目を見開く。
礼の言葉さえ忘れる程、じわじわ訪れる幸福を噛み締めていた。

「そんだけだ…俺、見張り戻るから。」

そう言ってサンジの前を足早に通過するゾロ。
サンジはその腕を掴んで引き止めた。

「何だよ。」
「まさかそれだけか?」
「はあ?」
「てめえはそんなクソ可愛いこと言って、ただで済むと思ってんのかってこと。」

サンジはくわえていた煙草を落とした。
まだ長く残る煙草は、サンジの靴の下で役目を終えた。

「お前…。知るかよ。」
眉間に深い皺を刻み、サンジの手を振りほどこうとしたゾロを己の腕の中におさめる。

「クソ嬉しい…ありがとう。」
「そうかよ…。」

ストレートな言葉に両者の鼓動は速まる。
近すぎる相手。
直に伝わる熱。
聞こえる鼓動がどちらのものかわからなくなる程に。

ゾロがサンジの肩に頭を預けた。
心地好い重みを名残惜しく思いながら、ゾロの顔を上げて覗く。
一度合った視線を外せなくなったゾロは、内心諦めた。

「(まあ…今日ぐらいは。)」

音を伴わなかった言葉と同時に、サンジの背中にゾロの腕が回った。

絡まる息は、白さを増して消えていく。
重なった二つの影は、月明かりの下でゆっくりと沈んでいった。



終。



今日ぐらいと言わず毎晩抱かr(ry


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