薔×薇

□その手を掴むのは
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あの時離したのが間違いだった。


「チョッパー…コイツ診てやってくれ。」

麦わらクルーの前に立ったのは、傷だらけのゾロを抱き抱えるサンジだった。

「サンジ…わかった、俺の部屋まで運んでくれ。」
「ああ、ありがとう。」
「おい、サンジ!!ゾロどうしたんだよ!?一体何が…。」
「…俺が悪いんだ。」


『その手を掴むのは』


遡ること、10時間前。

「島だあーっ!!」

船長の一声で、クルー達は一斉に船頭へ集まってきた。
船から見える島は大きく、十分な品揃えが期待出来そうだ。
皆それぞれ、欲しいものを思い浮かべ買い出しを楽しみにしていた。

「肉ーっ!!」
「薬品揃えないとなっ。」
「本屋もあるかしら。」
「酒。」
「先に食料だろ!!」

久々の上陸に、クルー達の心は浮かれていた。

大きな港に船を停め、ウソップとブルックを船番に残し
皆それぞれに散らばっていった。


「おい、何だこれ。」
「ブルーチーズ。お前食ってみたいって言っただろ。」
「そうじゃねえ!!何で手なんか繋いでんだよ!!」
「あぁ?手だけじゃ足りねえ?」
「うるっせえ!!」

手をほどかれた勢いで、サンジの体がよろけた。
「おっと。」と、紙袋の中のブルーチーズを庇いながらサンジは体勢を整えた。

何もそこまですることねえじゃねえか。
手ぐらい何だってんだ、減るもんじゃあるまい。

言ってやろうと思った言葉を飲み込み、サンジが顔を上げると
ゾロがスタスタと歩いていくのが見えた。
呆れたような顔でサンジはその後を早足で追った。
ふぅ、と吐き出した息は、いつもよりダルそうである。

「迷子んなるぞ。」

追い付いたサンジがゾロの腕を引っ張ると、再び、激しく手を払われた。

「やめろっつってんだろ!!てめえは女のケツでも追っかけてろ。」

プツン――…

「やけに突っかかるじゃねえか、剣豪さんよお。」
「てめえはいつも自分がやりたいことを俺にやるけどなァ、
俺だって嫌なことはあんだよ!!少しは考えろ!!」
「……あーそうかよ。じゃあてめえ一人で自由に行けよ。迷ったって俺ァ知らねェからな。」

最後に小さく「クソヤロウ」と吐いて、サンジは逆方向に歩いていった。
その後ろ姿を、バツが悪そうにゾロは見つめていたが、見えなくなると歩き始めた。



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