ドルフィン学園

□願いを叶えてくれる人
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『願いを叶えてくれる人』


部活終わりの帰り道、いつも渡る橋に差し掛かると、サンジが小走りで橋の先まで行った。
小さな川に架かる橋だから、それぞれが端にいても大して遠くない。

「なあ。」

いつものように呼ばれても、声は簡単に届いた。

「何だよ?」

だから、俺もいつものように返す。

「もし俺等が、年に1回しか逢えないとして。」

ああ…出たよ。

「しかもこの橋渡らねえと逢えねーの。」

ロマンチスト野郎が…。

「その1回の時に橋が壊れちまったら、お前どうする?」
「愚問だな。」

コイツだって俺の答えなんざ簡単に想像つくだろうに。
聞きてえんだろうな。
俺の口から。

橋の中腹まで歩いて、俺はサンジを見た。

「泳いで渡るさ。」

サンジは軽く笑って、俺の方に歩み寄ってきた。

「俺もそうする。」

そう言ってサンジは俺の手を取り、手首の辺りにキスをした。

「そしたら川ん中でやろうぜ。」
「アホか。」

いつもなら恥ずかしくなって一人で行っちまうところだがな…。

――俺もちょうど同じこと考えてた。

ぐいっ

「!」

俺のキスに驚くアイツを尻目に、サンジの手を取り歩き出した。

「早く行くぞ。」

サンジがまた、軽く笑ったのがわかった。
俺と歩みを揃えたサンジが隣に来る。

「随分と強引だな?織姫様。」
「自分の願いは自分で叶える。」
「…クソ嬉しいです。」

二つの足音は、より速くなっていく。
星に願うよりも先に、俺はコイツを抱き寄せるだろう…と思った7月7日。



終。



川ん中ってクールダウンも出来ていいかも。←


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