ドルフィン学園

□煙草
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『煙草』


「ふーっ…。」

サンジの口から吐き出された白い其れは、軽く俺にも絡み付いて匂いを漂わせた。
良いとは言えない匂いだけど、コイツと一緒にいることで慣れちまった。

「なあ。」

何も話さねえから、話し掛ける。

「ん?」
「煙草ってうめえの?」

別に会話がねえのが嫌って訳じゃねえ。
いや寧ろ、会話が無くてもコイツの隣は居心地がいい。

「気になる?」

少し前屈みになっているサンジは、顔だけこちらに向けて聞いてくる。
急に上がった口角が、目についた。

「だってよー。」

壁に凭れていた体を起こして、俺はサンジと目線を合わせた。

「匂いも良くねえし、体にも良くねえのに吸うくらいだろ?」

サンジの顔と煙草を交互に見て続ける俺を、サンジは何か嬉しそうな表情で見てる。
何だコイツ…。

「別に美味い訳じゃねえんだけどな。」

また「ふーっ」と煙を吐き出してサンジは続けた。

「何かやめらんねえんだよな…常に無いと落ち着かないっつーか。」

空を仰いでいたサンジが、煙草をくわえたまま俺の方を見た。

「言ってみれば。」

そう言いながら動いたサンジの左手は、煙草ではなく俺の頭に触れた。

「お前みたいな存在。」
「…ふーん。」

…ん?俺、今何か…何かすげえ…

「…って、なに恥ずかしいこと抜かしてんだよ!」

サラッと言われて、サラッとし過ぎてて、反応の遅れた俺は幸せボケでもしてるんだろうか。

「お前の反応って可愛いのな。」
「っ…!!////」

声をあげて笑うサンジが楽しそうで、そんなコイツを見てると俺は何も言い返せない。



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