ドルフィン学園

□芽生え。
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仕方無い。
気付いてしまったものは、仕方無い。


『芽生え。』


「お前、映画とか観に行ったりしちゃったりする?」
「は?」

飯を食い終わった昼休みの中頃、その声は突然隣から聞こえた。

「映画。好きだったりしちゃったりする?」

そいつは俺の方に居直り、耳障りな言葉を続けた。
独特な眉が視界に入った。

「そのイカれた日本語やめろ…。」

俺が呆れて視線を反らすと、サンジは体を乗り出して俺の椅子の背もたれに手をかけてくる。

「わりぃわりぃ!お前、映画好きか?」

俺の顔を下から覗く顔は、あまり清々しいものではない。

――女が絡んでる。

直感的にそう思った。

「まあ人並みに…。」
「じゃあ、犬好き?」
「ぇ…動物は好きだけど。」
「じゃあ決まりだな。お前は今週の日曜日、俺と映画『Pochi』を観に行く。」
「はっ!?」

落ち着き払ったようにサンジは言った。
何だコイツ…そんな顔して言うことかよ…。

「…またフラれたのか?」
「え゛?」
「どうせ女に断られたんだろ?映画。」
「ち、ちげぇよ!!今回はお前と行く為にだなあ…。」
「お前、俺と犬の感動映画観たかったわけ?」
「そっ、そうだよ!」
「…………。」

何か必死な顔して言うサンジから目を反らし、俺は頬杖をついた。

別に女が誰だって俺には関係ねえ。
ただ、イライラする。
それだけ。

やがて午後の授業が始まった。
徐々に込み上げてくるその感情に、俺は気付かなかった。



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