ドルフィン学園

□大嫌いで大好き
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『大嫌いで大好き』



昼休みになると、女子の甲高い声が教室に響く。
ただ、女子の輪の中には決まって一人の男子の声も聞こえる。
その声は屋上にいるゾロの耳にも余裕で届いた。

『ナミさん、ルルーさん、今日も可愛いね〜!』
『もう、サンジ君ったら。』
『ルルー、ニヤけちゃダメよ。
はい、サンジ君これあげるから、女の話させてくれる?』
『はぁーっい!ナミすゎーん!』

「………。」

「……うぜぇ。」

小さく呟くゾロの耳に、階段を駆け上がる音が聞こえた。

ダッダッダッダッ…!

「…うぜぇ。」

バン!

「うっぜぇんだよてめェ!!」

屋上入口のドアが勢いよく開いたのと同時に、
ゾロはそのドアを開けた人物を怒鳴り付けた。

「…は?俺?」
「てめェ以外に誰がいるってんだよ。」

きょとんとしたサンジの下で、ゾロは再び壁に寄りかかった。
不機嫌な顔で目を瞑ると、眉間に皺が寄る。
強い風に煽られて、サンジの長い前髪が彼の視界を邪魔した。
黄色い髪の間から覗く顔を見て、サンジは少し笑った。

サンジはドアを閉めて、そのまま座ってドアに凭れた。

「何でわかった?」
「は?」

自分の隣で聞いてくるサンジを、ゾロは片眉を上げて見た。

「何で俺だってわかった?」
「だってお前今ナミに…。」

ハッという顔をして、ゾロは顔を赤らめた。
ニコニコと、気持ち悪いくらいニコニコとサンジは微笑む。

「てっ、てめェ等がデカい声で喋るから…っ。」

ぽふっとサンジの手がゾロの頭に乗り、ゾロの怒鳴り声が弱まる。
サンジは眉を少し下げて、相変わらず微笑みながらゾロの頭を撫でた。
真っ直ぐ向けられる幸せそうな瞳にゾロは動けなくなる。

ゾロはこの微笑みが苦手だった。
苦手というか、敵わないというか…。

「妬いちゃった?」
「誰が妬くか!」

赤面するゾロは、サンジの手をどけて、プイッと頭を振った。
体を起こして頭をかくゾロ。
その姿を、また穏やかな瞳で追ったサンジは、
思い出したように胸ポケットに手を入れた。

「飯もう食っただろ?食後のデザート食おうぜ。」
「デザート?」

サンジの声にゾロが振り返ると、「デザート」らしき小さな包みが目に入った。

「飴?……要らねえ。」
「何でだよ。折角ナミさんから頂いたレアもんだぞ。」
「知るかよ!っつーか1つしか無ェじゃねえか!」
「ぁ?そうだよ?」

そう言ってサンジは飴を包みから出し、口に入れた。

「なっ…。」

何なんだコイツ…!?

イラッとしたゾロは、再びサンジに背を向けた。



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