薔×薇

□剣士の仕事
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額を合わせ、より間近にサンジを見る。
頬に添えられていた手が、俺の左目の傷に触れた。

「また傷作りやがって…。」
「俺らしいだろ?」
「馬鹿言え。俺の真似だろ?」
「ち、違ェよ…お前こそ何だよ。分け目変えて。」
「んーお前がそうなったから?」
「え?」

サンジは笑って、また俺を抱き締めた。

「わかんねえけど、テレパシーなんじゃね?」
「は?」
「だって凄くね?」

また俺を見た顔は本当に嬉しそうで、喜びに満ちていた。

「お前の左目が開かなくなって、俺が今までのままじゃ、
こうやって向き合った時上手く目合わないだろ?」

満面の笑みで、はしゃぐように言うサンジが子供みたいに見えた。
2年経ってるのにな。

「何なら両目とも出せば良かったじゃねえか。」
「わかってねえな。」
「?」
「お前が見えるのが右目で、俺が出してるのが左目だろ?
それぞれ右と左、俺等は2人で1つなんだよ。」
「……くさ。」
「赤い顔で何言ってやがる。」
「うるせえ…。」

この状況で平常心なんて保てるかよ…。

「俺、2年前お前に言ってなかったことあるんだ。」
「え?」

急に真面目な口調でサンジは話し始めた。
真っ直ぐな瞳が俺を捕らえて離さない。

「俺、お前が好きなんだ。」
「ぇ…そんなこと…。」
「馬ァ鹿…言いたかったんだ。」

そう言ったサンジは、赤い顔を隠すように俺の左目にキスをした。

「俺がお前の左目になる。俺と一緒になろう。」
「一緒に…って、お前…。」

上目遣いで笑ったサンジは、俺の左手を取り、甲に口付けた。
そのまま甲板に跪き、俺の手を握ったまま顔を上げた。

「俺と結婚して下さい。」

深い藍色の瞳は、揺らぐことなく俺を見つめた。
あまりに真っ直ぐなそれに、目をそらせなくなる。

「ッ………勝手にしろ。」

再び立ち上がったサンジは、俺を引き寄せ顔を近付けた。
後頭部に回された手は、先程のように震えてはいない。

「じゃ、遠慮なく頂きます。」
「クソエロコック…。」

互いに充分過ぎる程体は熱っていた。
その熱は、朝まで冷めることは無かった。




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