薔×薇
□その手を掴むのは
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野郎との買い出しなんざ楽しいもんじゃねえ。
…ただの野郎ならな。
船の上で過ごしているクルー達にとって、島での買い出しは良い気分転換になる。
そのいつもとは違う雰囲気の中をゾロと歩くのが、サンジは好きだった。
アイツ、意外と笑うんだよな。
子供みてえによ。
「ぁ…。」
サンジの目に、酒屋の前にいるゾロが映った。
小さい店だが、赤と青の派手な看板が目立つ。
「兄ちゃん、コレ飲んでみな。」
「ん…うめえ!」
「だろー?中にも沢山あるから寄ってって!」
二人の若い男に連れられ、ゾロは店の中へと入っていった。
「……。」
酒を飲むゾロは、本当に素直に笑う。
今のサンジには、それが気にくわない。
「チッ…。」
サンジの舌打ちした音がゾロに届くはずもなく、二人の距離は離れていった。
「へえ。珍しい酒が沢山あるんだな。」
店内を見渡して、楽しそうにゾロが言う。
「うちの品揃えは島一番だぜ!」
店の男達は、調子よく次々に酒をすすめてくる。
昼間からタダで飲めるなんてついてるなあ。
なんて、のんきなことを思いながらゾロは酒を平らげていった。
出される酒を試飲しながら店内を回り、奥の棚にあった1本の酒瓶の前で足を止めた。
「この酒…。」
* * * * * * * *
「オールブルー?そりゃ海の名前だろ?」
「ちげえよ。そういう酒があるんだよ。
珍しい酒で滅多に手に入らねえんだけど、
そのまま飲めばどんな料理にも合うし、
料理酒としても使える万能な酒なんだ。」
「ふーん…。」
* * * * * * * *
いつかアイツが、目を輝かせながら言っていた。
料理の話なんて全くわかんねえし興味も無いけど、
アイツが楽しそうに話しているのを聞くのは嫌いじゃなかった。
「おっ!兄ちゃんお目が高いね!」
「これも飲んでみるか?」
「いや、いい。これもらおうか、な――。」
あれ…目が霞む…。
ドサッ――