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□子供の頃より
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僕は暗殺兵なんだ。



例え仲間であっても斬らねばならない時は斬る。



仕方がないんだ。



自分で望んだ道なのだから。







僕はアサシンの中でも恐れられているX1に所属している。



そこでは共食いと呼ばれる冷酷な戦いが待っていた。



仕方がないんだ。



やらなきゃやられるんだから。







同志で斬りあい殺し合い。



目の前はいつも鮮血の赤で染まっていた。







もう君たちの名前も憶えないようにしているんだ。







情なんか要らない。



只管に斬ればいい。



ここでは人の痛みなんて考えている暇はないんだよ。



仕方がないんだ。



これがここでの生き方なんだ。











ごめんね、ケロロくん。



キミが褒めてくれて嬉しくて、だからアサシンになったのに。



人を傷つけて平気でいる奴なんてイヤだよね?



弱虫で病弱で軟弱なゼロロは。







もういないんだ。







僕は強くなった。



あの時よりも。



心も体も。



丈夫で傷つかなくなれたんだ。







ジララ様は僕のことを優しいというけれど。



僕自身は『優しい』なんて言葉の意味を忘れかけている。











ケロロくん、僕はどうしたらいい?



どうしたらあの時にもどれるの?



ギロロくんも一緒に、笑っていた日々が懐かしい。







僕の青い肌は、また赤くなる。







洗い流せど洗い流せど。



僕の体は赤くなる。



落ちてくれなんかしないんだ。







僕の重ねた罪を僕はずっと憶えている。



忘れたいのに。



斬った感覚だけは消えない。







アサシンは皆こうなのだろうか。



それとも僕だけなのだろうか。



どっちでもいいような、だけど何か忘れてはいけないような。



よく分からない気持ちに襲われた。































『ゼーロロ』



ケロロくんの声が蘇る。





『今日、ゼロロの家に行ってもいい?』



ああ、ケロロくん。





『プルルちゃんもギロロも呼んでさぁ』



あの時はありがとう。





『漫画持ってってやるよ』



僕に声を掛けてくれて。





『あ、お菓子はゼロロが用意しろよ〜』



おかげで今の今まで心が壊れてしまうことはなかったよ。





『サンキュ、ゼロロ』



本当にありがとう。































「ゼロロ二等兵」



ジララ様は僕をアサシンのトップだと認めてくれた。



ただトップとなったが故に、僕はアサシンを極めることが出来なかった。



何の記録にも残らないような者達こそ、闇に生きられるのだという。







甘く考えていたな。



まあいい。



もう終わったんだ。



無暗に人を斬らなくてもいいんだ。







「お世話になりました、ジララ様」



僕が言うと、ジララ様は笑ったようだった。



「貴殿は本当に優しいな」



「え・・・」



「読まなくても分かる」



「・・・ジララ様・・・・・・」



僕は気が付いた。











































自分の目に涙が浮かんでいることに。






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