ボーダーライン

□9.
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宿屋の主人はとても親切な人で、朝ご飯も出してくれた。


俺たちは…と、いうより俺は今日城へ村の伝統工芸品を持って行くつもりでいる。


セラフィナは多分……多分騎士になるべくかけあうつもりなんだと思う。


「セラフィナ、行くか」


「ええ、そうね」


「そのまま騎士になる相談をして宿に帰るのか?」


「んー…せっかくだし、少し買い物して帰るけど。
リンクはどうするの?今日もう帰る?」


セラフィナは俺に背を向けて鏡に向かい、髪を括り始めた。


セラフィナの栗色の髪の毛が手櫛でざっと集められる。


さらさらとこぼれ落ちそうな髪の毛を全てまとめあげて、セラフィナは満足げに鏡を見て確認した。


「そんなに髪の毛括るの面白い?」


セラフィナが何処が可笑しいの?と言わんばかりにくすりと笑う。


「よく手だけでそんな綺麗に括れるなぁと思ったんだよ。あ、俺も今日は買い物してもう一日泊まる。
帰るのにやっぱり朝早くの方がいいからな」


「そう。じゃあ私がまだ取り込み中でも先に城下に戻ってていいからね」


俺はセラフィナの言葉に頷いた。






宿を出てレンガの小道を歩く。


エポナは宿に預けたまま。


彼女には悪いが、城下を歩くのには少し不便だからだ。


ただ、伝統工芸品を運ぶ役目を負っていたから、エポナを連れて行けないとなると、けっこう困る。


「…重い」


「頑張れー、リンク」


俺の切実な声に軽く答えるセラフィナ。


ちょっとは手伝ってくれればいいのに。


まだ朝も早いというのに城下の人間はせかせかとレンガの道を行き交っていた。


大通りから城下の丁度中心にある大広場に出れば、そこから北通りに入る。


ハイラル城下町北通りはハイラル城に続く大きな通りで、店も多いが、どちらかと言えば高級店が建ち並び、北通りの路地の奥に行けば貴族の館もある。


反対に南通りは活気溢れる市場ばかりが並ぶ通りで、行商人から出店、カフェ、レストランなど様々な店が建ち並ぶ。


そして東通りは旅人や行商人のための宿屋などが立ち並ぶ。


残った西通りは城下に住む人々の家々が多く立ち並ぶ静かな通りで、医者や日用品を売る店が多い。


北通りに入った俺とセラフィナはそのまま人の合間を縫ってハイラル城前広場、北広場に入った。


此処まで来れば、衛兵の数も多くなる。


大きな大理石の門の左右に構える衛兵に伝統工芸品を届けに来た旨を告げると、門の中から待機中の別の衛兵が現れた。


「カナルの伝統工芸品を届けに来たそうだな」


「はい」


「私が今から城内へ案内する」


衛兵に付いて門をくぐり、その先にある両開き門を橋を挟んで2つくぐれば、ハイラル城が姿を現した。


立派なオブジェが幾つか並び、手入れの行き届いた広い庭を両脇に広いレンガ道を歩く。


少し行った所に、大きな城門が見えた。


常に開けっ放しになっているらしい城門を見上げながらくぐる。


「リンク…やっぱり凄いね」


ぽかんと呆気にとられるセラフィナをちらりと見て、俺は笑った。




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