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□10.
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セラフィナが戻ってくるまでの間、俺は城の庭園で暇を潰していた。
特に誰かがいる訳でもなく、少し寂しげな庭園に一人たたずむ俺も端から見れば変わり者。
しかし、行く宛もすることもない上に、城門付近で待つとなればそわそわするのも無理ない。
セラフィナと別れて軽く10分は経っただろうか。
礼服を着たきれいな女性が城門から入って来た。
女性はきょろきょろと辺りを見回して何かを探しているようだった。
「あの、ちょっとすみません。
この辺でこのぐらいの水色のブローチを見かけませんでしたか?」
突然の女性の問いかけに俺は少し驚いたが、どうやら本当に探し物をしているらしい。
「ブローチですか…見てないですね。
心当たりはないんですか?」
「先ほど城をお伺いしたんですけど、そのときに落としたことは分かっているんです。
でも、城のどの辺りで落としたかは…
もしお暇でしたら、探すの手伝っていただけません?」
「俺でよければ手伝いますが…
城は初めてなのでここの地理に関しては全くありませんが」
「大丈夫です。私、少し目が悪くて見落としたりすることがあるので」
と、いうわけで成り行き上暇だった俺はこの女性のお手伝いをすることとなった。
「まずは、城内ですね」
という女性の後を付いて、再び俺は城内へ。
俺は下に注目しながら、彼女は衛兵に尋ねながら、彼女が行ったという場所を全て見て回ったが、何処にも落ちていなかった。
「ない…ですね」
「あーどうしましょう!何を言われるか…ブツブツ」
彼女はなにかぶつぶつと独り言をいいながら、悪い目で必死に探す。
でも俺の見た限りどこにも落ちてはいない。
「他に心当たりは?」
「えぇ……心、当たり…
あ!もしかしたら中庭かもしれません!」
彼女はひらめいたようにポンっと手を打って、中庭へと歩き出した。
俺もそのあとを付ける。
中庭なんて初めて行くところ。
俺には全く方向が分からなかったが、彼女は迷いもせずに中庭へと歩いて行く。
廊下を抜けて、渡り廊下のような所に出た。
どうやらここが中庭らしい。
城の白い壁に緑の木々が立ち並んで、しかも花もたくさん咲いている。
さながら何処かの花畑のようだった。
さすがハイラル城。
「ここで何をされていたんですか?」
「ええ、と…
私、申し遅れましたがノーラといいます。
城で姫様の教育係を務めています」
「えぇ?!お姫様の教育係?!」
俺は唖然とした。
礼服を着てはいるがどこか庶民的な雰囲気を纏うこの女性がまさかこのハイラル王国の国王の娘の教育係だなんて…
「…そんな驚かれなくても。
姫様の教育係と言いましてもそんなたいそうなご身分ではないので。
すみません、あの…貴方は?」
「あっ、すいません!
俺はリンクといいます」
「リンクさん?」
「はい、カナル村の者です。
今日は伝統工芸品を届けに」
「あら、そうですか。あの羊のミルクの美味しいとこですよね?あと、木彫り細工の可愛い…」
あの木彫り細工を可愛いという女性は初めて見た。
大概カナルの木彫り細工は荒々しいと言われるのに。
ノーラさんってどこか抜けた人なのかもしれない。
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