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□4.
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エポナが少し寂しそうにこちらを見つめて来る。


結局、昼食をとるよりも先にいい宿屋を見つけた私たちは、エポナを預けることに。


普段とは違う場所だから、ご主人様が自分を置いて行くことが分かって、心細いのだろう。


小さな、こじんまりとした宿屋のこれまた小さな馬小屋にエポナを繋ぎ止めた。




「エポナ、すごく心細そうだった」


「エポナも此処は初めてだからなぁ」


リンクと並んで歩くなんて少し久しぶりかもしれない。


小さい頃から仲は良かったから、


お互いの小さい頃のこともよく知っている。


昔は同じぐらいの身長だったのに、今ではもう、私より頭一つ分近くの差がある。


「ん?どうしたの?」


ずっと私がリンクの横顔を眺めていたものだから、リンクが不思議そうに尋ねて来た。


「ううん、何でもない」


「変なセラフィナ」


そう言いながらもリンクの目は優しく弧を描いていた。


「あっ、あそこにレストランがあるよ」


私の指差す方には真新しい建物に、看板を掲げたレストランだった。


「ここでいい?」


「私は何処でも。美味しい食事にありつけるなら、ね」


私の答えにリンクも俺もだよと答えた。


店のドアを開けると、明るい笑顔の店員さんが声をかけて来た。


見た目はこじゃれた雰囲気で、レストランぽいのだがどうやら酒場だったようである。


店内には旅人から、昼間からお酒にありつく仕事中らしいおじさんまでたくさんだ。


「はい、メニュー。決まったら呼んでくださいね」


私は店員さんからメニューを受け取ると、先に店内奥に進んでいたリンクの後を追った。


店の端の方のテーブル席に私たちは腰を下ろした。


「レストランじゃなくて、酒場だったね。
さすがに宿場町にお洒落なレストランはないか」


少し苦笑いの私に、リンクが


「店変える?」


と、聞いてきた。


何ともリンクらしい提案だ。


「大丈夫。にぎやかなのが宿場町のいい所でしょ?」


私がそう言うと、リンクはそうだねと言ってメニューを開け始めた。


「じゃあ俺はこれで」


リンクが指差したのはナポリタン。


「おいしそう。じゃあ私はこの日替わりパスタで」


そうと決まれば早く注文を済ませる。


さっきメニューを渡された店員が現れ、注文を受け取って行った。


「いつもこの辺までこんなに時間かかったっけ?」


「いや、今回は食材系は積んでないけどいろいろ壊れ物を積んでるから。それに、セラフィナもいるしゆっくり歩いてるんだ」


「私は大丈夫。そんな気使わないでよ」


「いつもなら峠の途中にある細い抜け道を使ったりするんだけど、道が悪いし、安全に行こうと思ってさ」


「そっか、どうりで遅い訳だ」


リンクが頷く。


やっぱりリンクだな〜とまた思ってしまう。


こういうちょっとした心遣いというか、優しさを見せる所がリンクらしい。


昔から優しかったし、今もそれは変わらない。


まぁ、あえて言うなら、プラスかっこよさも付け足されたんだけど。



「あっでもそれだけでもないか。
私には意地悪して来たもんね。レーナにはしなかったくせにね?」


ちなみにレーナって言うのは私たちの幼なじみ。


村長の娘で、アルの姉だ。


「いきなり何だよ?」


「え?こっちの話だよ」


リンクが少し不機嫌そうに眉を寄せたが、


すぐに料理が運ばれて来たので、それから先に話は発展しなかった。




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