ボーダーライン

□5.
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だんだん訳が分からなくなって来た。


リンクがレーナを気になっていることも、リンクの顔を見たくないことも。


少しずつ日が傾いて来ている。


結局私はリンクから逃げて逃げて…


よく分からない所に来た。


「はぁ〜何してんだろ、私。
今更そんなことで憂鬱になるだなんて…」


分かってたことじゃない。


私はれんが造りの建物の壁にもたれかかった。


軽く額を押さえる。


自分の気持ちをちゃんと整理しておかないと…


またこうやってリンクから、レーナから逃げてしまう。



しばらく私はぼーっとしていた。


「お嬢ちゃん。こんなとこでぼーっとしてたら日が暮れちまうよ」


大柄なおばさんが私に声をかけて来た。


「あ、はい」


「もう夕方だしね、危ないよ。
最近じゃ旅人を襲う輩も多いからねぇ。そうだっ!うちに泊まって行きな。連れはいるのかい?」


「えっ?!あ、はい。一緒に来た人はいますけど…
泊めてもらうだなんて、そんな…」


「いいよいいよ。気にしない!
お嬢ちゃんをやすやすと悪い奴らの餌食にするぐらい私は落ちぶれてないからね」


おばさんはにこにこと笑いながら、私の肩をばしばし叩いて来た。


「さっ、そうと決まればお入り!」


おばさんの厚意に甘えて、私は一晩泊めてもらうことにした。




「お店やっておられるんですか?」


「うちはパン屋だよ。朝は早いけど、店を閉めるのも早いからね」


おばさんは私をテーブル席に連れて来て、


「まだ晩ご飯食べてないんだろ?」


「はい。宿でとる予定だったんですけど…」


「ったく、嬢ちゃんの連れは何してんだい?
こんな可愛らしい娘を放っておくだなんてねぇ〜」


「違うんです。リンクは悪くないんです」


「リンクって言うのかい?嬢ちゃんの連れは」


おばさんは私の前にパンとスープとサラダを出して、向かいの席に座った。


「はい。私が逃げ出して来ちゃったんです」


「へぇ〜なんだか青春だねぇ。
おっと、私の名前はテナ。嬢ちゃんは?」


「私はセラフィナと言います」


「セラフィナだね。そのリンクってのは男だろ?」


「幼なじみなんです」


「幼なじみで旅に出てんのかい?」


「リンクは町まで荷物を届けに、私は買い物するために行こうってことになって」


テナは頬杖をつきながらふ〜んと唸った。


「で、なんでそのリンクから逃げて来たんだい?」


私は頂いたパンをちぎって、口に運びかけて止まった。


「…それは」


「まぁ他人の私には言いにくいことかもしれないね。
部屋を案内するから、食べ終わったら呼んでおくれ」


「はい」


テナさんは店の奥に消えて行った。


明日のしこみでもするんじゃないだろうか。


とりあえず今日は帰りたくない。


そんな気持ちが渦巻いている。


なんであんなちょっとしたことで、こんなに憂鬱になって、悩んでるのか私にも分からない。


とにかく今はリンクの顔がまともに見れそうにない。


「早く整理しないと、2人に酷い態度をとってしまいそう」


リンクは私の幼なじみ。


幼なじみ?


本当にそう思ってる?


本当にただの幼なじみなの?


……好きって?


好きって何?



この気持ちって、なんなんだろう?




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