REVIVAL

□26
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風は収まってしまった


待つだけの日々


26, 時間は過ぎるが



あれから1年。


茅野は連絡を一つも寄越さなかった。


ヴェントの存在が消えた今、彼女はどうしているのか。



「あーもう無理。これやっといて」


「十代目、それは俺がサインできるような書類じゃないんですよ。あと少しですから頑張ってください」


「後少しって、これ…どう考えても少しって量じゃないよな?」


俺の視線の先には山積みされた書類。


主に長期任務から最近帰って来たやつらが一気に書き上げて持って来たものばかり。


ほんとどいつもこいつも気遣いって物がない。


茅野も…だ。


別れ際に連絡だけはしてほしいと言ったにもかかわらず、全く連絡はなかった。


「十代目、例の…風雅の件ですが」


「何か分かった?!」


「あ、いえ」


「……そっか」


「しかし、それらしき情報は掴めました。信憑性はありませんが」


「隼人、ほんと?!」


俺は思わず立ち上がってしまった。




茅野の情報。


信憑性はないが、どうやらまだマフィア関連の仕事をしているらしい。


隼人が言うに多分情報屋だろうと。


彼女の力を持ってすれば、情報を盗むのは容易い。


俺は不謹慎にもほっとしてしまった。


彼女がもし裏社会から足を洗っていたら…


二度と俺は彼女と会えないだろうから。


本当はマフィアから離れた暮らしを送ってほしい。


でも、同時に俺の傍に戻って来てほしいという気持ちもある。


彼女の所在や仕事、連絡先が分かった所で、表舞台に引きずり出す必要も本当はないんだ。



「はぁ…」


「十代目、どうなさいますか?」


隼人の言わんとしていることが分かる。


「…もう、いいよ。
これ以上調べて茅野の所在とか分かった所で、どうしようもないし」


「本当にいいんですか?」


隼人が眉根を寄せる。


俺は苦笑いを零して椅子に座り直した。


俺は先ほど出来たところの書類を隼人に渡した。


「とりあえずこれ返しといて、出来たから。
あと、これは報告不十分。やり直し。
で、これはそのうち会議でもう一度説明してもらいたいから、言っといて」


「はい。では、俺は失礼します」


隼人は一礼して執務室を出て行った。



時間ばかり過ぎて、俺は一つも前へ進めていない。


あの”最後の審判”のときからボンゴレは変わっていない。


ただ、1年でかなり抗争や暗殺などの任務の数が減った。


俺は元々抗争とかそういうことが嫌いだから、ある意味望んでいた状況と言える。


茅野が消えてから、俺はボンゴレの精神についてもう一度ファミリーに示し直した。


その結果が今の状況に直結しているなら、


茅野とその先祖…


代々風の守護者が守って来てくれていた”ボンゴレの精神”はこれからも受け継がれて行くだろう。


俺の手元に唯一残った風のリングが、主がいないと寂しがっている。


そんな気がした。




同じ空の下にいながら


思いは一方通行


時間ばかりが流れる


そろそろ風も


止んでしまうかもしれない






to be continued

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